(11)【北断層】上畑地区

・選定理由

北断層中央地区で、谷中分水嶺の異常地形が認められる場所である。

・概略

リニアメントはあまり明瞭ではない。また、段丘面は多くは崩積土が低地を埋積しており、特徴的な線状模様は明瞭ではない。

水系は、深く浸食して北流する峡谷と、東西性の20度〜30度で傾斜する、幅300m程度の低地に区分され、低地南側の山地に源を発する北流河川は、東西性の低地に一端を捕獲され、東流もしくは西流し、その後北流し、渓谷を形成している。このような地形形成機構から、北流する必従河川の上流部で、何らかの原因で東西性の差別浸食が生じて、このような水系異常になったものと考えられる。

低地面には段丘面が認められるが、河川の流向に対し調和的であり、細かな面を形成している。

・地形

低地面;山体に接続し、東西性の河道面に接する低地面は、大きくは10度〜20度で傾斜する連続した緩傾斜面をなし、明瞭な段丘面とは言い難い。ただし、東西の河道では比高差50cm程度の平坦面が数段認められ、これよりも山体側に移行するにつれ比高差1m以上の平坦面が、数段形成されている。各平坦面の縁辺は河川の流れに調和的な曲面を形成し、その曲率半径は40m程度である。このような面上には、特に直線的な縁辺地形(変異地形)は認められない。また、当地区西側では、傾斜は20度程度とやや急になり、平坦面の形成も弱く、むしろ数m〜10m程度のピッチで1〜2m程度の比高差を生じる不陸地形を形成している。これらより上方の山体には、滑落崖が認められ、地滑り等による崩積土の堆積によってこのような緩傾斜地形が形成されていると推定される。

なお、山体中腹には、低地に向かって急傾斜から緩傾斜に向かう傾斜異常が散見される。ただ、この傾斜異常の高度は不規則であり、また、南北性の谷によってそれぞれが分割され明瞭なリニアメントは形成していない。その傾斜異常の背面には崩壊滑落崖が認められることから、地滑り等に起因するものと解釈される。

・水系

低地部を挟んだ両側の山体では、その河川の流量に比べて著しく険しい渓谷を形成しており、その沢の一部の谷頭は、30m以上の深い帯状の壺底をなしている。また、北側山体では、10m以下の狭隘な谷底低地を形成し、かつ100m以上の比高差を持つ険しい谷を形成するが、水量は毎分1000lにも満たないことが観察された。

・地質

低地南側の山体ではシルト岩が露岩し、東西性の断裂系が著しく発達している。また、礫岩とシルト岩との境界部では、東西性のリムを持つ落差3m程度の滝を形成している。シルト岩には、数cm以下で、高密度の割れ目が発達し、広域には破砕帯を形成している。南側山体の壺底谷頭部分では、東西性の破砕帯の露頭に沿って、表層崩壊が生じている。