地表の震源から生成された地震波は、地層中を伝わり、地層境界面で反射して再び地表へ戻る。これらの反射波を地表に直線状に配置した多数の受振器で記録し、反射波の到達時間と振幅(波形)を処理/解析することにより、地下の速度構造と地質構造形態を明らかにするのが反射法地震探査(反射法)である。
反射法には調査対象地域により、陸上調査、海上調査、海陸境界部調査等があり、それぞれ震源・受振器・観測方法を工夫する事により、地球上の殆どの地域で反射法による地下構造調査が実施可能である。
反射法地震探査は、元来、地下数1000mの石油・天然ガス等の地下資源探査を目的として発展してきた技術であるが、近年は、基盤構造調査・活断層調査・下部地殻等の深部構造調査等、一般的な地質構造調査にも積極的に用いられ、地表地質データおよび調査ボーリングデータと組み合わせる事により、日本各地での地質構造形態が解明されつつある。
都市部において、深部構造把握のための調査方法としては、大型のバイブロサイスを震源として使用する場合が、最も一般的である。
図3−6にバイブロサイス反射法の作業概念図を示した。図の上部に調査の概念図を示した。
観測車からの無線信号により、バイブロサイスは発震を開始する。
反射波は、地表の多数の地点(通常100〜200ヶ所程度)に設置された受振器で観測される。各受振点での観測波形は、ディジタル信号に変換され、観測車に集められて磁気テープへの出力、現場モニター記録の出力等が行われる(この様な装置をディジタルテレメトリデータ収録装置と言う)。
発震点・受振点とも測線上を移動しながら、発震・受振・記録を繰り返す。これらの大量のデータを処理/解析することにより、反射断面図を得る事ができる(図の下部)。
反射法の結果は、測線上のある地点直下の地下の情報を各地層境界面からの反射波形として表現され、それらを測線に沿って一定間隔に並べて表示される。縦軸は、通常地表から反射面までの往復時間として表示されるが、速度解析の結果を用いて深度に変換して表示される場合もある。
この表示により、地下の地層境界面の形状が反射波の並びとして表現され、地層の堆積状況、褶曲、断層等の地下地質構造形態が視覚的に理解できる。また、反射波の振幅は地層境界面での速度の差が大きいほど大きくなるので、反射断面図上の反射面の振幅から地層の性質についてもある程度推定できる。
(2)共通反射点(CDP)重合法
共通反射点重合法の概念図を 図3−7に示した。
測線上に一定間隔に受振点を設け受振器を設置し、測線上の一点で発振して多数の受振点で反射波を同時観測する。この時同時受振する受振点数をチャネル数と呼ぶ。
次に、発振点と受振点全体を同距離だけ移動し、発振を行い記録を取得する。この様に発振/受振を規則的に繰り返すことにより、地下の同一の点(共通反射点(CDP))で反射したデータが2重、3重に取られる事になる。 このデータに種々の補正処理を行い、足し合わせる(重合)ことにより、測線上の各CDP位置の直下の地下反射波が強調される。足し合わせるデータの数を重合数と呼ぶ(概念図中では3重合)。
また、各CDPを構成するデータの補正処理を行う時、各反射面までの反射波の速度情報も得ることができる。
(3)反射法の解析原理
CDP編集後、地下の一点からの反射波に着目すると、反射波の反射時間(T )と発震点/受振点間の距離(オフセット距離 X )およびその反射点まで波の速度(V )とは、近似的に以下の関係がある。
式3−2−1参照
速度 V を与えた時、反射時間とオフセット距離は双曲線の関係にあると言える。この関係を用いて、種々の速度 V を仮定してそれぞれのオフセット距離に対応する反射時間をオフセット距離 0 の反射時間に補正する処理(NMO補正)を行うと、真の速度を与えた時のみ反射波は同一時間 T0 に並び、これを足し合わせる(重合する)ことで雑音の少ない反射波を得られることになる。この速度 V はRMS 速度と呼ばれ、平均速度より数%大きい。