活断層研究会(1991)の野辺地断層沿いでは、リニアメントをほぼ境として、西側に中新統の和田川層が、東側に中新統の市ノ渡層及び更新統の高位段丘堆積物が分布している。
市ノ渡層の構造は、添ノ沢において走向がほぼN−S、傾斜が30゚E、清水目川において走向がほぼNW−SE、傾斜が26゚E、赤川上流において走向がほぼN−S、傾斜が50゚E、上原子において走向がほぼN−S、傾斜30゚Eであり、添ノ沢では和田川層を不整合に覆っているのが観察される。このように、市ノ渡層の構造は、概ね走向がN−Sで30〜50゚東へ傾斜しており、リニアメント直下及び近傍で断層露頭は認められない。高位段丘堆積物は、リニアメント直下や近傍では小規模で断片的に分布しており、和田川層あるいは市ノ渡層を傾斜不整合で覆っている。また、高位段丘堆積物は、リニアメント東側の清水目川から坪川にかけて広く分布しており、地形面と同様な勾配で極めて緩く東から北東へ傾斜している。高位段丘堆積物についても、リニアメント近傍及びそれ以外の地点でも、これらを変位・変形させるような断層又は、断層の存在を示唆するような地層の急傾斜、擾乱等は確認されなかった。
〈中部地域東部 … 上原子断層沿い〉
空中写真判読の結果では、東北町宇道坂から天間林村上原子にかけての約3kmに、高位面を約10m変位させる東上がりの逆向き低断層崖が明瞭に判読される。両端延長部の低位面および三本木面にはリニアメントを含む変位地形は認められない。リニアメントの東側では、高位面のほか七百面も東に傾斜しているが、その勾配は、高位面でより大きく、東側への傾動に累積性が認められる。三本木面、低位面には傾動は認められない。
リニアメントが判読される付近には、中新統の市ノ渡層・鮮新統〜更新統の甲地層・高位段丘堆積物・七百段丘堆積物が分布しており、リニアメント北方延長の、添ノ沢、リニアメント直近の清水目川及び赤川沿いの3箇所で東傾斜・東上がりの逆断層(詳しくは後述する)が確認された。
以下に断層が確認された地点の地質状況について記述する。
@添ノ沢地点
添ノ沢地点のルートマップを図3−3−1−1、図3−3−1−2、図3−3−1−3、図3−3−1−4、図3−3−1−5に、法面スケッチ図を図3−3−2−1、図3−3−2−2、図3−3−2−3に、法面写真を図3−3−3に示す。
断層(KF−1断層と称する)は、中新統市ノ渡と更新統の高位段丘堆積物を切断する東上がりの逆断層である。断層面の走向・傾斜は、N26゚E、18゚SEで、断層近傍では高位段丘堆積物が最大50゚程度傾斜している。
A清水目地点
清水目川地点のルートマップを図3−3−4−1、図3−3−4−2に、断層露頭スケッチ及び写真を図3−3−5−1、図3−3−5−2、図3−3−5−3示す。断層(KF−2と称する)は、中新統市ノ渡層中に認められる。断層面の走向・傾斜はN13゚W、31゚Eで、断層の走向はリニアメントの方向とほぼ一致している。
断層は高位段丘堆積物を変位をさせており、市ノ渡層の変形から、東上がりの逆断層と判断される。
B赤川上流地点
赤川上流地点のルートマップを図3−3−6に、断層露頭スケッチを図3−3−7に、断層写真を図3−3−8に示す。
断層は高位段丘堆積物に変位を与えており、地層の引きずりから判断して、東上がりの逆断層と判断される。