(2)調査結果

地質分布をみると、このリニアメントを境にして西側に中新統の和田川層が、東側に中新統の市ノ渡層、鮮新統の甲地層、更新統の高位段丘堆積物・古期扇状地堆積物・新期扇状地堆積物が分布しており、さらにそれらの東側に七百段丘堆積物及びそれより新しい堆積物が分布している。

市ノ渡層は、高位段丘堆積物、古期扇状地堆積物、新期扇状地堆積物に覆われほとんど地表には露出していないが、南端の添川において、走向はほぼN−S、傾斜 30゚Eで和田川層を不整合に覆っているのが観察される。この露頭では断層は認められない。甲地層もほとんどが高位段丘堆積物、古期扇状地堆積物、新期扇状地堆積物に覆われており、下位の市ノ渡層との直接的な関係は不明である。甲地層はリニアメントの東側の各河川下流域の河岸・河底にわずかに露出しているにすぎず、そこでは傾斜10゚E以下の極めて緩やかな構造となっている。

高位段丘堆積物および古期扇状地堆積物は、リニアメント直下や近傍で和田川層に直接アバットして不整合に覆っており、地形面と同様な勾配で極めて緩く東から北東へ傾斜している。リニアメント近傍およびその周辺では、これらの第四系を変位させる断層や断層の存在を示唆するような地層の急傾斜、擾乱等は確認されなかった。新期扇状地堆積物は、高位段丘堆積物あるいは古期扇状地堆積物を開析した谷を埋積して分布し、リニアメント直下や近傍で和田川層に直接アバットして不整合に覆っており、新期扇状地堆積物を変位させる断層や断層の存在を示唆するような地層の急傾斜、擾乱等は確認されなかった。

リニアメント西側に分布する和田川層は、塊状の安山岩が主体であり、その構造は判然としない。市ノ渡層及び甲地層は、リニアメント近傍(河川上流部)で走向がほぼN−S、傾斜が約30゚Eと比較的急傾斜であるが、それより東側の河川下流域では10゚E以下と緩やかになっている。それらを覆う高位段丘堆積物から天狗岱段丘堆積物も東に緩く傾斜しており、高位の段丘ほど傾斜が大きい。ただし、高館段丘堆積物およびそれ以降の堆積物はほとんど水平な構造を示している。