(2)地質各論

(1) 新第三系中新統

A 四ッ沢層

四ツ沢層は、調査地域の西側を南北に延びる山地の中の、土場川上流、近沢川上流、坪川上流、倉岡川上流、作田川上流などに断続的な分布を示すが、それらを連ねた所は概ね背斜構造の軸部に相当する。坪川以北では周囲はすべて和田川層に覆われているが、両者は指交の関係にあると考えられている。倉岡川以南では、四ツ沢層は市ノ渡層に不整合に覆われる。四ツ沢層は、岩井(1986)によれば主として流紋岩質凝灰岩と硬質頁岩からなり、これらに安山岩、同質凝灰岩、玄武岩及び流紋岩等を伴い、さらにデイサイトや安山岩の貫入岩がみられるとされているが、調査地域には流紋岩質凝灰岩、硬質頁岩及び玄武岩が分布している。流紋岩質凝灰岩類は、淡緑色〜黄白色の凝灰角礫岩ないし細粒凝灰岩からなるが、変質が著しく、いわゆるグリーン・タフとなっている。硬質頁岩は、黒色〜灰褐色を呈し、層理の発達が顕著である。所により青灰色の細粒砂岩を挟む。玄武岩は、主に倉岡川や作田川付近に分布する。黒色〜暗緑色を呈し、塊状であるが、一部は自破砕質で凝灰角礫岩状を呈する。

B 和田川層

和田川層は、調査地域西部の山地に広く分布する。本層は、四ツ沢層とは指交関係にあり、上位の市ノ渡層に不整合に覆われる。和田川層は、奥羽脊梁山地に広く分布する地層で、模式地では硬質頁岩及び黒色頁岩で代表されるが、調査地域では安山岩(溶岩)及び同質凝灰角礫岩が主体をなす。安山岩(溶岩)は、暗緑色〜暗黒褐色を呈し、輝石安山岩質である。凝灰角礫岩は、暗紫色〜暗灰色を呈し、塊状無層理であるが、所により凝灰岩を夾在する。

C 市ノ渡層

市ノ渡層は、調査地域西部の山地の東端付近を、作田川から枇杷野川右岸まで南北の帯状にほぼ連続して分布するが、枇杷野川以北では地表での分布が確認されていない。本層は、下位の和田川層を不整合に覆い、鮮新統の甲地層に不整合に覆われる。市ノ渡層は、灰色〜黄灰色の凝灰質砂岩、黄白色の軽石凝灰岩、軽石を多く含む火山礫凝灰岩等の数cm〜数mの不規則互層が主体をなし、下部に安山岩の円礫を含む中〜大礫岩を伴う。砂岩や凝灰岩にはしばしば平行ないし斜交葉理が発達する。

(2) 新第三系鮮新統(甲地層)

甲地層は、調査地域西部の山地と平野の境界付近を、作田川から清水目川まで南北の帯状にほぼ連続して分布するが、枇杷野川付近より北では地表での分布が確認されていない。清水目川流域の本層は、従来清水目層と呼ばれていたものに相当する。本層は、下位の市ノ渡層を不整合に覆い、更新統の段丘堆積物に不整合に覆われる。甲地層は、岩相から上部と下部に区分される。下部は安山岩質の大礫を多く含む礫岩及び石英に富む黄灰色〜褐灰色粗粒砂岩を主体とし、黄白色の軽石凝灰岩や軽石を多含する火山礫凝灰岩を伴う。清水目川の河床部では、岩相の境界部にしばしば凹凸に富む削剥面が見られ、水流の強い堆積環境にあったことが推定される。上部は、明黄褐色のシルト岩や青灰色の細粒砂岩を主体とし、しばしば黄白色の軽石凝灰岩を伴う。下部に比べて穏やかな堆積環境にあったことが推定され、枇杷野川付近では材化石を含む亜炭層を挟んでいる所がある。

なお、調査地域南部の天間林村底田付近では、本層上部に砂鉄鉱床を賦存しており、かつて採掘が行われていたが、地表にはほとんど露出していない。

(3) 第四系更新統(段丘堆積物及び扇状地堆積物)

段丘堆積物は段丘面に対応して高位、七百、天狗袋、高館、三本木及び低位段丘堆積物からなり、扇状地堆積物は古期及び新期扇状地堆積物からなる。 

高位段丘堆積物は、調査地域中部の坪川から枇杷野川にかけての台地にやや広く分布するほか、坪川以南や枇杷野川以北の山地末端の緩傾斜尾根部に断片的に分布し、中新統市ノ渡層や鮮新統甲地層を不整合に覆う。高位段丘堆積物は、宮内(1985)によれば層厚10m以下で淘汰の良い砂礫層からなり、シルト層を介在し、地蔵平テフラ(Jzd)に覆われるが、段丘構成層の直上から地蔵平テフラ(Jzd)までの間に2mほどの褐色風化火山灰を伴うとされているが、調査地域では亜円〜亜角礫質の中〜大礫を主体とする礫層が卓越し、砂やシルトの薄層を伴う。礫種は安山岩類が主体で、流紋岩や凝灰岩を少量含む。礫はくさり礫化していることが多く、褐色〜赤褐色を呈する。

七百段丘堆積物は、調査地域中部の坪川から本木川にかけての台地にやや広く分布するほか、坪川以南の山地末端の緩傾斜尾根部に断片的に分布する。七百段丘堆積物は、宮内(1985)によれば層厚30mを越える黄色の中粒砂からなり、地蔵平テフラ(Jzd)以上のテフラに覆われるとされているが、調査地域では中礫、砂及びシルトからなり、ときに軽石質の火山灰を伴う。

古期扇状地堆積物は、調査地域北部の枇杷野川以北の山麓部に、緩傾斜の台地をなして分布する。古期扇状地堆積物は、亜円〜亜角礫質の中〜大礫を主体とする礫層が卓越し、砂やシルトの薄層を伴う。礫種は安山岩類が主体で、流紋岩や凝灰岩を少量含む。礫はくさり礫化していることが多く、褐色〜赤褐色を呈する。

天狗岱段丘堆積物は、調査地域中部の清水目川から本木川にかけての台地に分布する。天狗岱段丘堆積物は、宮内(1985)によればボーリングシェルやサンドパイプの生痕が見られる層厚15mほどの海成砂層からなり、甲地テフラ(Kac)以上のテフラに覆われるとされているが、調査地域の露頭で堆積物を確認できる所はほとんどない。

田代平溶結凝灰岩は、調査地域中央部の坪川から支流の小坪川(地域外)の両岸に断続的な分布を示し、火砕流が河谷に沿って流下してきたことを物語っている。本岩は、紫灰色〜赤紫色の石英安山岩質凝灰岩で、溶結度は中〜弱を示し、場所により変化する。なお、天間林村白石付近の一部では、白〜灰白色の非溶結凝灰岩が見られるが、地質図にはこれも含めて田代平溶結凝灰岩と表示した。本溶結凝灰岩と上下の地層との関係を調査地域では確認できていないが、村岡・高倉(1988)の八甲田第2期火砕流堆積物、町田・新井(1992)のHkd−2に相当し、天狗岱段丘堆積物と同時期かそれを被覆するとされている。

高館段丘堆積物は、調査地域北部の野辺地湾岸から中央部の清水目川右岸にかけて分布する。高館段丘堆積物は、中川(1972)によれば層厚数m以内の礫質砂層からなり、ザラメテフラ(ZP)以上のテフラに覆われるとされているが、調査地域では概ね中礫、砂、シルトからなる。なお、宮内(1985)は、沼崎泥層以上の野辺地層を高館面構成層に含めている。

三本木段丘堆積物は、調査地域南部の作田川から中央部の坪川にかけて、台地をなして広く分布する。三本木段丘堆積物は、下部と上部に分けられる。下部は、暗灰色のシルト、砂及び亜角礫質の中礫を主体とし、シルトの中に亜炭を伴う層厚数mの堆積物からなり、湖沼的な環境下の堆積物と考えられる。上部は概ね層厚10m以下の明灰色軽石流堆積物を主体とするが、その削剥面上にクロスラミナの発達した砂及び中〜大礫の互層を3〜5m累重する所があり、火砕流の後、流水の作用する環境下にあったことが推定される。

低位段丘堆積物は、主として調査地域南部の作田川や中央部の坪川の河岸に分布する。段丘構成物は、層厚5m程度の円磨された大〜巨礫層からなり、礫は新鮮である。

新期扇状地堆積物は、調査地域北部の枇杷野川から本木川にかけての山麓部に分布する。堆積物は、亜角礫から亜円礫質の主として安山岩類大〜巨礫からなり、礫は比較的新鮮である。

(4) 第四系完新統(沖積低地堆積物)

沖積低地堆積物は、調査地域の全域にわたり、山地や台地を開析した河谷を埋めて、狭長な分布を示す。堆積物は地表ではほとんど確認できないが、層厚数mの礫、砂、シルト等からなるものと考えられる。