浅層反射法弾性波探査を実施したT−4測線の反射断面図から、浪岡撓曲の変形が及んでいる深度は津軽山地西縁断層帯と同等かそれ以上であり、活動の累積性がある。このことから、津軽山地西縁断層帯と比較して、浪岡撓曲を1766年の津軽の地震の地震断層のひとつとして考えることもできるが、最新活動の兆候は見つからなかった。調査で明らかになった累積変位量から平均変位速度を求めると以下のようになる。なお年代は津軽山地西縁断層帯と同じ値を用いた。
・鶴ヶ坂凝灰岩部層の基底面(60〜70万年前)
……累積変位量 約450m、
……平均変位速度 0.64〜0.75m/千年
・Tm段丘堆積物の基底面(20〜22万年前)
……累積変位量 約110m、
……平均変位速度 0.50〜0.55m/千年
浪岡撓曲は、その規模、活動度のいずれもが津軽山地西縁断層帯に比較しても劣らない。よって、前述のように、1766年の津軽地震の歴史資料による被害分布図からはこの地震時に津軽山地西縁断層帯が活動した可能性は高いといえるものの、この時に津軽山地西縁断層帯が単独に動いたのか、浪岡撓曲も同時に動いたのか、ということについては不明である。
ただし、本調査においては浪岡撓曲の調査については十分であるとは言い難い。例えば浪岡撓曲の分布については詳細な調査を行っていない。したがって、本調査における浪岡撓曲の評価はあくまで目安とするべきものである。