(6)予備調査の結果及びトレンチ調査位置の決定

(1) A測線(熊野宮北西側)

A測線で実施した予備調査のボーリング対比図を図2−3−20に、極浅層反射法弾性波探査の反射断面図を図2−3−21及び付図17に、電気探査の比抵抗断面図を図2−3−22、及び付図18に示す。また、各ボーリングの地質概要を2−111〜2−115ページに、ボーリング柱状図を報告書資料編に添付する。

ボーリング調査のうち、B7からB11までの6本は予備調査で行い、B12・B13はトレンチの掘削後に追加として行ったものである。地表から2〜3mの腐植土および砂はB7、B8、B8'及びB9の4本のボーリングで良く連続する。含水率が高く、非常に軟弱である。その下位の腐植土及び粘土はA測線のほぼ全域で良く連続する。比較的締まっており、硬い。また、B10・B11では表土の下に腐植混じりのシルト、軽石混じり砂があり、B7、B8、B8'及びB9に見られたような軟弱な腐植土はない。このことからB10・B11での腐植混じりのシルト、軽石混じり砂及び締まった砂・粘土はTm面段丘堆積物、軟弱な腐植土・砂は沖積層であると考え、Tm段丘堆積物上の谷を沖積層が埋積しているという状況が想定された。

このボーリング調査で、B8とB8'の間で深度1〜3mの軟弱な砂層の連続が悪くなっている。この地点は下石川の谷底低地の北西側のリニアメントの延長上にあたるため、断層による変位である可能性がある。この場合、落差は約1mである。

また、電気探査の結果でも、測線の32〜36mの間で中比抵抗の部分が盛り上がるような形を示しているのが認められる。この位置はB8とB8'の位置とほぼ同じである。

極浅層反射法弾性波探査では、反射断面図の測線で20m地点、深度で23mに位置する反射面が西上がりでずれており、同じく5m地点、深度で31mに位置する反射面も同じ方向にずれている。このセンスは想定している断層と同じであり、ずれている反射面の末端を連ねてゆくと測線で32〜36mの間で断層が地表に達することになる。ただし、深度20m付近の反射面は連続している。

以上の結果から測線の32〜36mの間を断層が通過している可能性があると考えて、測線の45m地点から西側へ向かって溝堀りを行い、トレンチの位置を決定して整形することにした。

溝掘りでは以下のことが観察された。農道よりも東側では軟弱な腐植土が2m以上と厚く堆積しており、厚さ数cmの良く連続する中〜粗粒砂層を挟在する。深さ約1.5mから下では腐植土は未炭化の葦を大量に含み、この堆積物が極めて新しいものであると考えられた。深さ2.5m付近では非常に軟弱な中粒砂及び砂礫が存在し、谷を埋めた堆積物の基底であると考えられる。また、地表から50cmほどの腐植土中に厚さ2〜3cmの火山灰を挟在し、火山灰分析によって十和田−八戸火山灰(To−HP:1万2千〜1万3千年前(町田・新井、1992))であることが判明した。目的とする測線の32〜36mの間では砂層の下の腐植土がマウンド状に盛り上がっており、断層による変形は存在しないことが確認された。溝掘りをさらに西側へ延長したところ、12m地点付近で軽石混じり砂等の地層が東側へ向かって曲がり込んでいるのが認められたため、ここをトレンチとして整形することにした。

(2) B測線(下石川谷底低地)

B測線で実施した予備調査のボーリング対比図を図2−3−23に、極浅層反射法弾性波探査の反射断面図を図2−3−24及び付図17に、T−3測線と極浅層反射法弾性波探査の位置の対比図を図2−3−25に、電気探査の比抵抗断面図を図2−3−26及び付図18に示す。

ボーリング調査としてB1〜B6を実施した。いずれのボーリングでも農耕土の下位に厚さ3m以上の砂礫層がある。このうちB2およびB3には非常に軟弱な腐植土混じり粘土が確認された。また、B5及びB6には農耕土の下に厚さ60cm前後の燈褐色から灰白色のシルト質粘土が存在する。軟弱な腐植土はB2およびB3には出現するが、B1及びB4には出現しない。また、B4は遷急点のすぐ上流側に位置する。

断層がB4付近を通過しているとすると、この軟弱な腐植土はB4の上流側にのみ分布することから断層の活動によって生じた沼沢地の堆積物である可能性が高い。腐植土が砂礫の中に挟在されるのは、沼沢地の上をまた河川性の砂礫が埋積したとも考えられる。

電気探査では顕著な構造のずれなどは認められなかった。

極浅層反射法弾性波探査の結果ではいくつかの反射面のずれが認められる。この反射面のずれのうち、T−3測線に認められた反射断面図のずれの延長に極浅層反射断面図の反射面のずれが連続している部分が認められた。このずれは地表から深度10m程度のところまでは確認できたが、それより浅いところでは解析精度の範囲を超えてしまうため未詳である。