この扇状地面の傾斜は段丘面東部では約1.2°(20/1,000)であるが、扇状地面西部の高校敷地付近では約1.5°(25/1,000)と、若干急になる。空中写真判読でも扇状地面の末端は傾斜がわずかに急になり、撓曲が認められる。津軽山地西縁断層帯沿いの段丘面区分図を付図2及び図2−3−1に示す。また、五所川原農林高校の立地する扇状地面の地形断面図を図2−3−2の 13 に示す。
しかし、Wfa面という地形面の同定については、扇状地の後背地となる山地が明確でない、段丘面のすぐ東側に残丘のような高まり(二ツ森など)がある等の問題がある。3.2項で述べたように、他地点の段丘面の傾動と比較すると単位時間当たりの傾動量が大きく、データから求められる平均変位速度である約0.2m/千年(後述)に比べ、この扇状地面では平均変位速度が約0.5m/千年と、2倍以上になってしまうという矛盾もあった。
このため、段丘面の時代検証として、面を覆う火山灰・堆積物中の炭質物の採取を目的としてピット掘削を行った。掘削位置を図2−3−8に、ピット展開図及び写真を図2−3−9−1、図2−3−9−2、図2−3−9−3に示す。ピットは3ヶ所実施し、広さ約1u、深さ約1.2mで掘削した。ピット1〜3の3ヶ所とも表土の下位に、褐色・淡褐色〜灰白色・青灰色で非常に粘性が強く、植根・炭質物を含む粘土が出現した。特にピット2では青灰白色の粘土の中に全く未炭化の葦もしくは茅が多く含まれていた。粘土は無構造であり、層理等は全く見られない。部分的に礫や砂を少量含むなど、全体に淘汰が極めて悪い。いずれのピットでも火山灰は認められなかった。
ピットで見られた地層は、その特徴から陸成の堆積物であると推察される。また、表2−3−2−1、表2−3−2−2に示すように、ピット3で採取した炭質物から10,230±50y.B.P.という14C放射年代値が得られた。このことから、この段丘面上にはWfa堆積物が分布している可能性が高いと推察する。また、この面の時間当たりの傾動がほかの地域に比べて大きいのは、撓曲崖の傾斜を読み取る際に扇状地としての初生的な傾斜も読み取っている可能性がある。