図２−２−１に主な火山灰調査地点を、図２−２−２−１、図２−２−２−２に火山灰柱状図を示す。

十和田中掫テフラ（Ｔｏ−Ｃｕ）は十和田カルデラを給源とする降下軽石からなり、その噴出年代はこれまで報告されている１４Ｃ年代に基づいて、約５，５００ｙ．Ｂ．Ｐ．と推定されている（町田・新井，１９９２）。このテフラは、青森東部地域において認定されている（青森県，１９８４）。

十和田八戸テフラ（Ｔｏ−ＨＰ）は十和田カルデラを給源とし、青森県東部を広く覆う。互層状に成層した細粒と粗粒の白色軽石からなる（青森県，１９８２）。

太田ほか（１９７９）など数多くの１４Ｃ法年代測定よって噴出年代は１．２〜１．３万年前と推定されている。このテフラは岩木山麓（黒木，１９９５）や津軽平野東縁地域で確認されている（吾妻，１９９５）。

姶良Ｔｎテフラ（ＡＴ）は南九州の姶良カルデラを給源とし広く本州を覆う広域テフラで、その噴出年代は多くの＜ｓｕｐ＞１４＜／ｓｕｐ＞Ｃ法年代測定によって、２．１〜２．５万年前と推定されている（町田・新井，１９９２）。その後、四国沖の海底堆積物から採取されたＡＴに対して、ＡＭＳ法による＜ｓｕｐ＞１４＜／ｓｕｐ＞Ｃ年代値に基づいて２４，３３０±２２５ｙ．Ｂ．Ｐ．と見積もられている（村山ほか、１９９３）。なお、このＡＴの＜ｓｕｐ＞１４＜／ｓｕｐ＞Ｃ年代を暦年代（真の年代）に換算するには、＜ｓｕｐ＞１４＜／ｓｕｐ＞Ｃ濃度の経年変化を考慮して約２，０００〜３，０００年古くする必要があるとされている（村山ほか，１９９３）。このテフラは津軽平野西縁地域において認定されている（辻・小杉、１９９１）。

十和田大不動テフラ（Ｔｏ−Ｏｆ・Ｔｏ−ＢＰ１）は十和田カルデラを給源とし、降下軽石からなるＴｏ−ＢＰ１と火砕流堆積物からなるＴｏ−Ｏｆに分けられる。Ｔｏ−ＢＰ１は給源より北東に分布の軸を持ち、青森県東部を広く覆っている。Ｔｏ−Ｏｆは十和田湖を中心に北東−南西軸上で約１００ｋｍに渡って分布している（町田・新井，１９９２）。その噴出年代は大池（１９７８）などの多数の＜ｓｕｐ＞１４＜／ｓｕｐ＞Ｃ年代値により、約３万年前と推定されている（大月，１９９１）。

洞爺テフラ（Ｔｏｙａ）は洞爺カルデラを給源とし、北海道から東北地方一帯を覆う広域テフラである。 このテフラの噴出年代はジルコンのフィッショントラック法年代測定より１３０±３０ｋａ（奥村・寒川，１９８４）、熱ルミネッセンス法年代測定で１０３〜１３４ｋａ（高島ほか，１９９２）と求められて、層位学的には御岳第１（Ｏｎ−Ｐｍ１；８万〜９万５千年前（フィッショントラック法））の下位にあることからＴｏｙａの噴出年代は１０〜１２万年前と考えられている（町田・新井，１９９２）。このテフラは鯵ヶ沢地域（宮内，１９８８ａ）、岩木山麓（黒木，１９９５）や津軽半島地域（吾妻，１９９５）で確認されている。大池・中川（１９７９）の白タフ（ＷＴ）に相当する。

八甲田第２期テフラ（Ｈｋｄ−２）は八甲田山を給源とする火砕流堆積物で（村岡・高倉，１９８８），青森西部地域〜上北地域では田代平熔結凝灰岩と呼ばれている（青森県，１９８３，１９８４，１９９１）。Ｈｋｄ−２の噴出年代は村岡・高倉（１９８８）がＫ−Ａｒ法年代測定で　　０．４０Ｍａ、高島ほか（１９９０）が熱ルミネッセンス法年代測定で０．１９〜０．２９Ｍａを報告している。岩崎（１９８３ａ）のＴＥ１に相当する。

八甲田第１期テフラ（Ｈｋｄ−１）は八甲田火山を給源とする火砕流堆積物で、津軽平野西縁地域や青森西部地域の海底火砕流堆積物である鶴ヶ坂凝灰岩部層に相当する（村岡・高倉，１９８８）。Ｈｋｄ−１の噴出年代として村岡・高倉（１９８８）がＫ−Ａｒ年代測定で０．６５Ｍａ、高島ほか（１９９０）が石英の熱ルミネッセンス法年代測定で０．５１〜０．５５Ｍａを報告している。