電気探査は、地盤を構成する物質や地盤状況を反映する電気比抵抗に着目した探査手法である。本調査においては、極浅層の電気比抵抗分布を解析し、地質分布を推定することにより、トレンチ位置の決定に役立てることを目的として実施した。
(2) 原理
地盤の比抵抗(ρ)は、図1−2−7に示すように、地盤の単位体積当たりの電気抵抗のことである。弾性波速度など他の物理量が地盤を構成する物質ごとに異なるのと同様に、比抵抗値も固有の値を示す。
地盤を構成する物質が均質な場合、すなわち、比抵抗(ρ)が一定の場合は、電極間隔(a)を変えて測定しても同じ比抵抗値となる。しかし、実際の地盤は均質でないため、電極間隔を変化させると、得られる比抵抗値は電極間隔aを直径とした半球の平均的な値となってしまう。そのため、この値は見掛け比抵抗値と呼ばれる。
今回実施した比抵抗映像法は、まず有限要素法を使った地形補正や遠電極補正を施して見掛け比抵抗分布を求め、これを初期モデルとして「逆解析」を行うため、精度良く地盤の真の比抵抗分布を求めることができる。
(3) 測定方法
測定方法の概略を図1−2−8に、測定の流れを図1−2−9に示す。地盤の比抵抗を測定するには、地盤に電流を通電し、このとき発生した電位を測定する。そのため、電流を流すために2本の電極(測線内電流電極(C0)、遠電極用電流電極(Cr))を、また電位差を測定するために2本の電極(測線 内電位電極(P1 P14)、遠電極用電位電極(Pr))を設置する。電流および電位の遠電極は測線から十分離れた地点に設置する。
測定は、まず測線の始点 0m 地点に電流電極(C0)を、距離程1m地点に電位電極(P1)を設置する。測定は、電流電極間(C0〜Cr間) で電流を流し、電位電極間(P1 〜Pr間)の電位差を測定する。次に電流電極はそのままの位置で、電位電極(P1)を距離程2mの地点(P2)に移動し、(P2〜Pr) の電位差を測定する。測線内の電位電極を順次移動し、最大14m 地点(P14) へ移動し(P14〜Pr) の電位差を測定すると、1番目の展開が終わる。
第1展開の測定が終了すると、距離程0m地点の電流電極を距離程1m地点に移動し、電位電極を距離程2m地点から15m地点まで移動させ順次測定する。
このようにして電位差の測定を行い、電流電極が測線の終点まで来れば測定は終了する。
使用した機器の仕様一覧を表1−2−8 に示す。また、報告書資料編に現場作業状況の写真を添付する。
(4) 解析方法
解析の流れを図1−2−10に示す。
デ−タを入力後、減衰曲線を用いたデ−タのチェックを行う。測定デ−タのチェックが終了すると、遠電極補正と地形補正を行う。地形に起伏がある場合、測定された位置には地形の影響が含まれているため、解析に際しては、これを補正する必要がある。この補正を実施するため、有限要素法による地形補正の計算を実施し補正係数を求め測定値に乗じ、見掛け比抵抗の補正を行う。
この補正した見掛け比抵抗を初期値とし、逆解析を行う。逆解析は下図に示すように見掛け比抵抗の測定値と、理論値との差(残差)が小さくなるまで繰り返し計算する。