・細越浅田地区(北側)で実施したピット調査の結果、沖積層中に液状化の痕 跡である砂脈が認められた。その砂脈はG層・H層(3,820±70〜4,010±60 年前)を貫いており、E層(2,830±60〜2,910±60年前)に覆われている。
・文献資料(『縄文文明の発見』(PHP研究所,1995),「ラグーンを臨む大地 での生活−三内丸山遺跡の地形環境−」(高橋学))では、三内丸山遺跡にお けるピット調査で液状化の痕跡である砂脈が認められ、砂脈は約4100年前 の地層を貫き、約3500年前の地層に覆われるとしている。
細越と三内は約3kmの近距離に位置しており、ほぼ同時代の地層に液状化痕が認められることから、年代が重なる約3,500〜3,800年前のこの地域に地震動による大きな揺れがあったことはほぼ間違いないと考えられる。また、それ以降の年代の地層に液状化痕が認められないことから、津軽平野に大きな被害を与えた1766年の津軽大地震や、約500年間隔で活動するとされている海溝型地震で起きた液状化の可能性は極めて低い。従って、入内断層が活動したことにより発生した地震である可能性が高い。以上のことから、入内断層の最新活動時期は約3,500〜3,800年前と推定した。
また、細越浅田(南側)のボ−リング調査結果、地層の傾斜の変化から撓曲(あるいは断層)は、Al4層(3,500±70〜3,870±70年前)に変位・変形を与えているが、Al5層(1,310±70〜3,020±70年前)に変位を与えていない可能性が考えられた。しかし、入内断層が主に撓曲からなるため、1回の活動で地層が傾斜する角度が約0.5゚以下であることが考えられ、ボーリング調査では誤差が大きくなってしまうため、データとしては採用しなかった。
今回の調査結果、入内断層の最新活動時期は約3,500〜3,800年前の可能性が高く、活動周期が3,500年以上と考えられる。なお、入内断層の分布範囲(約12km)を松田(1975)の式にあてはめると、地震の規模はML=6.6、単位変位量(鉛直方向)は0.95mとなる。断層面の傾斜を約45゚と仮定すると単位変位量は約1.34mとなり、この単位変位量を平均変位速度(約0.8m/千年)で割った活動周期は約1,700年となる。しかし、今回の調査で最新活動時期は約3,500〜3,800年前の可能性が高いことが明かとなっており矛盾する。