(1) 地質構成及び地質年代
ボーリング調査で確認できた地質構成は、下位からT3段丘堆積物(T3層)、T4段丘堆積物(T4層)及び沖積層(Al層)である。
沖積層(Al層)は層相・堆積構造等から下位よりAl1〜Al5に区分できる。また、沖積層は、沖積谷でもT4層の上位に確認される。
各地層で実施した年代測定結果は表2−2−3に示したとおりであり、これらの測定値から、各地層の年代を概ね以下のように推定した。
Al5層 1,300〜3,000年前
Al4層上部 3,300〜3,500年前
同下部 3,500〜3,800年前
Al3層 4,000〜4,500年前
Al2層 5,100〜9,700年前
Al1層 12,000〜18,000年前
段丘堆積物のT4a層及びT4b層は主にシルト、粘土及び砂からなり、腐植土を挟有する。こののうち、T4a層中には層厚が約1mで石英粒を含む腐植土層が鍵層として認識され、平野から沖積谷部下、段丘面下に追跡することができる。T4a層は腐植土層の年代が45,690年前以前であること、シルト及び粘土を主体とした細粒相からなることから、比較的海水準の高い時期である酸素同位体ステージ3(50,000〜60,000年前)に形成されたと考えられる。T4b層については14C法年代測定の結果得られた年代値にややばらつきがみられる。T4b層がT4a層よりも新しいことを考慮すれば、30,000〜50,000年前であると推定される。
(2) 地質構造及び変位量
ボーリング調査結果を基に作成した地質断面図を図2−2−13−1、図2−2−13−2、図2−2−14−1、図2−2−14−2に示し、ボーリングH9B−5〜8孔の地層の標高差を図2−2−15に示した。T4a層についてみてみると、入内断層が推定された段丘面と平野の境界(断面図の水路付近)から東側(平野側)へ約40m付近をほぼ境として、東側では、平野の地形面とほぼ同様な傾斜を呈しているしているのに対し、西側(山側)では7〜8゚東側へ傾斜する構造をなしている。T4b層及び沖積層(Al4層以下)でも同様な傾向が認められるが、東側への傾斜はT4a層に比べ小さくなる。また、表層部のAl5層については、現在の沖積谷及び平野の地形面の傾斜とほぼ同傾斜である。
水路から東側へ約40m付近にみられる地層の変形は、下位層ほど傾斜が急になる傾向があり、変形(変位)の累積が認められることから、撓曲あるいは断層によって生じたものと考えられる。また、水路から東側へ約40m付近が撓曲の脚部(東端)になると想定される。
今回調査を実施したボーリング調査の結果からは、T4a層に挟まれる腐植土の傾斜がH9B−7孔とH9B−8孔の間で最も急なことから、両孔の間(撓曲の脚部)が最も変位が大きいことが明らかとなった。なお、地層の傾斜が急に変わることから、地表部にも剪断面で断層が存在する可能性が考えられる。