3−4 調査結果のまとめ−明らかにされた点と今後に残された課題−

調査の結果、折爪断層の実体がかなり明らかにされた。反面、断層の活動性に関して今後に残された課題もある。以下に、それらを箇条書きに整理してまとめとする。

 

<明らかにされた点>

@ 文献・資料調査により折爪断層の実在性及びそのパラメータの概要が把握できた。

A 地形解析(空中写真判読等)により文献による折爪断層の位置にリニアメントが判読された。また、段丘面も文献とほぼ同様に区分された。

B 地表調査により、調査地域の地質・地質層序が確立でき、地質構造も褶曲、撓曲及び断層の分布をほぼ把握できた。折爪断層及び辰ノ口撓曲の位置・性状・延長末端がほぼ特定できた(後述)。

C 主な段丘面と示標テフラとの関係がほぼ確認でき、おもな段丘面の形成年代が推測できた。

D 青森県側での折爪断層の位置・形態の概要が明らかになった。

E 折爪断層・辰ノ口撓曲による変位は、馬淵川南岸から五戸川南岸地域において鮮新統斗川層基底面、高位面、高館面に認定され、変位量がそれぞれ約850m、約50m、約15mと見積もられた。ただし、読みとり値に±5m程度の誤差を含む。

F したがって、鮮新統以降の平均変位速度は0.16〜0.12m/千年算出され、活動性はC級に近いB級であり、小さいと考えられた。

G 最新活動時期は五日市面、三本木面を変位させていないと見られることから、少なくとも三本木面(約1.2万年前)形成以前と判断され、五日市面(約3万年前)形成以前の可能性があることが分かった。

<今後に残された課題>

折爪断層とその延長の辰ノ口撓曲に関しては、存在位置・形態、変位量・年代がほぼ明らかにされ、活動性もほぼ把握できた。今後は、活動性に関する数値の精度を向上させ、特に最新活動時期を確定しておく必要がある。

@ 地形的に変位が認定された各段丘面の火山灰の構成と火山灰下の段丘堆積物表層の標高把握……段丘形成年代と真の段丘形成面(堆積物)高度→変位速度等の精度アップ

A 最新活動時期の確定……五日市面、三本木面での段丘堆積物高度での確認。