(2)段丘堆積物とテフラ−段丘等調査結果−

調査地域の段丘面構成層は、古い順に、高位面群構成層、七百面構成層、天狗岱面構成層、高館面構成層、五日市面構成層、三本木面構成層、尻内面構成層1・2、沖積層に、火砕流堆積物は同様に大不動軽石流堆積物(To−Of)、八戸軽石流堆積物(To−H)に、扇状地・麓屑面構成層は同様に扇状地・麓屑面構成層1、扇状地・麓屑面構成層2に区分される。これらの段丘等を調査して、図3−2−8にテフラを含む段丘構成層の露頭柱状位置を、表3−2−2に火山灰分析結果を、また図3−2−9図3−2−10にそれらのテフラ柱状図を示す。

高位面群構成層は、主に馬淵川より北の丘陵頂部に、地形的に標高200〜180mのわずかな平坦面を残し定高性のある稜線として認められることから、分布が推定される。構成層そのものは、厚い火山灰に覆われ露頭が無く、確認できなかった。

七百面構成層は、馬淵川南方の法光寺付近の標高200〜180mの丘陵頂部及び五戸川北方の標高130〜110mに開析されているが平坦面を残して分布し、全体として南から北へ緩く傾斜している。本層は、法光寺付近の露頭1(図3−2−9)では砂やシルトの薄層を挟む、厚さ3m以上の礫層からなる。この礫層には、基質が軽石質でシルトや砂の岩塊を含む層準が挟在する。確認される被覆テフラはTo−HP以上で、より古いテフラは削剥され欠如している。また、五戸川流域の中市北方の露頭22(図3−2−12)では斗川層を直接覆って厚い火山灰層が観察され、十和田火山テフラ群とToyaより下位の八甲田火山起源のテフラ(八甲田第2火砕流?)が確認される。このような層相と地形面の分布形態から、五戸川北方のそれは海成段丘、馬淵川流域のそれは河成段丘と考えられる。

天狗岱面構成層は、馬淵川右岸の標高130〜140mに分布し、緩やかな起伏のある地形面を形成している。本層は露頭2で厚さ約7mの火山灰層のみが観察され、Toyaとそれ以上の主に十和田火山テフラ群が確認され、Toyaより下位にも火山灰が続いている。また、露頭3では、層厚2m以上の礫層とそれを覆うテフラはTo−CP、To−HPが確認されるが、より古いテフラは削剥され欠如している。

高館面構成層は調査地域の主要河川沿いに分布し、五戸川右岸では標高180〜70m、浅水川右岸では標高150〜80mm、馬淵川右岸では標高120〜60mに断続して分布し、いずれも右岸沿いに西から東へと河床勾配に調和して高度を下げる。本層は、馬淵川右岸の露頭4〜8、五戸川流域の露頭23では礫層を主とする下部と泥炭を挟むシルト層を主とする上部からなる。その層厚は少なくとも3m以上である。文献によればToyaが載っているとされるが、ほとんどの露頭でTo−HあるいはTo−HP以下のテフラは削剥され欠如している(図3−2−9)。その中で、露頭6ではそれ以下のテフラも観察され、Toyaは検出されなかったもののToyaに近い層準のテフラが確認された。

五日市面構成層は、馬淵川右岸に標高80〜30mと西から東へ河床勾配に調和して高度を下げながら断続して分布し、平坦面の保存はよい。本層は、露頭14(図3−2−10)のように、砂礫、シルト、十和田大不動火砕流(To−Of)とその二次堆積物からなる。その厚さは挟在するTo−Ofとその二次堆積物の厚さに依存して変化する。To−BP2以上のテフラに覆われる。

三本木面構成層は主要河川沿いに分布し、五戸川の標高130〜50m、浅水川の標高110〜40m、馬淵川の標高60〜20mに平坦面を形成している。いずれも西から東に河床勾配に調和して高度を下げる。本層は、露頭15(図3−2−11)のように、砂礫、十和田八戸火砕流(To−H)とその二次堆積物からなる。その層厚は挟在するTo−Hとその二次堆積物の厚さに依存して変化する。To−Nk以上のテフラに覆われる。

尻内面構成層1・2は主要河川沿いに分布し、五戸川の標高110〜50m、浅水川の標高90〜40m、馬淵川の標高40〜10mに開析されていない平坦面を形成している。いずれも西から東にその高度を下げる。構成層は砂礫・シルトからなる。To−Nb以上のテフラに覆われる。

沖積層は河川沿いに分布し、礫・砂・シルト・粘土からなる。

大不動軽石流堆積物(To−Of)は、灰白色〜淡赤褐色を呈する塊状無層理の軽石流堆積物である。堆積物中に岩片や炭化木を含む。なお、後述の八戸軽石流堆積物(To−H)と異なり角閃石を含まない。五日市面形成直前の堆積物である。

八戸軽石流堆積物(To−H)は、灰白色〜淡赤褐色の塊状無層理の軽石流堆積物で、丘陵や段丘を刻む谷系に沿って分布し、広い堆積面を残している。堆積物中には岩片や炭化木片を含む。前述のTo−Ofとは異なり角閃石を含む。三本木面形成直前の堆積物である。

扇状地・麓屑面構成層1は、馬淵川南方の山地と丘陵の境界に位置し、五日市面構成層を覆うかそれに連続するように分布する。本層は基盤岩由来の安山岩亜角礫からなる礫層である。To−Hp以上に覆われる。

扇状地・麓屑面構成層2は主として馬淵川に面した山地と段丘の境界に位置し、三本木面構成層や尻内面構成層を覆うように分布する。露頭がなく、本層の構成層は不明である。

調査地域の各段丘面構成層、扇状地・麓屑面構成層及び火砕流堆積物の形成年代は確認されたテフラ層序との関係から以下のようにまとめられる。

(段丘面堆積物、テフラ)  (年代)  (酸素同位体比、ピーク年代)

             ステージ

十和田中掫軽石   To−Cu …… 5.4ka

十和田南部軽石   To−Nb …… 8.6、8.37ka

尻内面1、2堆積物 Sr┌──┐

十和田二の倉テフラ To−Nk

三本木面堆積物 Sn┌──┐ …… 約13ka

   十和田八戸火砕流 ┌To−H ┐ …… 12〜13ka

   十和田八戸軽石  │To−HP│

十和田ビスケット2  To−BP2

  五日市面堆積物  It┌──┐ …… 約30ka

十和田大不動火砕流 ┌To−Of ┐… 25〜33ka

十和田ビスケット1  │To−BP1│

   十和田合同テフラ  To−G

キビダンゴテフラ Kb

十和田レッド To−Rd …… 50〜70ka

十和田アオスジ To−AP …… 80〜100ka

十和田カステラ To−CP

洞爺テフラ Toya ……… 103〜134、130±30、100〜120ka

高館面堆積物 Tk┌──┐ …… 110〜120ka …… ステージ5c、e 100〜122ka

ヌカミソ NP

甲地テフラ Kac ……… 170〜200ka

天狗岱面堆積物 Te┌──┐ …… 160〜200ka …… ステージ7  214ka

八甲田第2期テフラ Hkd2 ……… 190〜290ka

地蔵平テフラ Jzd …… 220〜240ka

七百面堆積物 Hc┌──┐ …… 220〜330ka …… ステージ9  328ka

地蔵平テフラ(Jzd)

高位面堆積物   H ┌──┐ …… 430〜470ka …… ステージ11  406ka