2−4 調査結果のまとめ−明らかにされた点と今後に残された課題−

調査の結果、入内断層に関していくつかのことが明らかにされたが、今後に残された課題が多い。以下に、それらを箇条書きに整理してまとめとする。

<明らかにされた点>

@ 文献・資料調査により、入内断層の実在性は高いことが分かった。また、活動性についてはA〜B級とした文献がある。ただ、断層の性状について具体的に詳細に記載したものはないこと、活動性に関するデータは地形に依存しており、地質による裏付け(特に変位・変形している地層の有無、変位量及び堆積年代等)が  ないことも判明した。

また、地震記録に関しては、三内丸山遺跡において砂の液状化による砂脈が認められ、縄文期に地震(ただし、震源は不明)があった旨の記載がある。

A 地形解析(空中写真判読等)により、文献による入内断層の位置に変位地形に起因したリニアメントが判読された。また、段丘面が5面区分された。

B 地表調査により、調査地域に分布する地質構成及び地質層序はおおむね把握できた。

C 各段丘については、段丘堆積物と火山灰等のデータが得られていない。したがって、段丘面あるいは段丘堆積物の形成年代が不明である。

D 全体の地質構造については、露頭状況が悪く、概略が把握できたにすぎないが、広域的に西側の丘陵地域と東側の火山山麓・平野地域とでは西高・東低の大きな構造差があって、西側隆起・東側沈降の構造運動が想定される。

E 入内断層については、位置、形態等を確認できなかったが、既存のボーリング資料、弾性波探査反射記録により、青森空港付近ではリニアメントとほぼ同位置に入内断層が推定され、西上がり東落ちの逆断層である可能性が高いことが推定された。

<今後に残された課題>

入内断層に関しては、以下のように、存在位置・形態の詳細、変位量・年代など断層のパラメータに関するデータがほとんど得られていないのが現状である。

@ 各段丘面について、地層構成と火山灰との関係のデータが得られていない。したがって、段丘面あるいは段丘堆積物の形成年代が不明である。

A 断層の全体像(位置、長さ、形態)が不明である。特に青森市街に近い北側での存在位置、形態の詳細が未解明である。

B 断層の変位量及び平均変位速度が不明である。断層を挟んで両側の地層の分布・厚さ・年代・変位量の確実な値が得られていないので平均変動速度は現状では推算できない。

C 断層の活動履歴(単位変位量)及び最新活動時期が不明である。