(3)珪藻分析

珪藻分析結果は、表3−4に示すとともに、各分析箇所の特徴について以下に述べる。

  

@ 試料D−1:bP6−1(b層中、深度11.80m)

A 試料D−3:bP6−2(b層中、深度 9.20m)

両試料とも特徴が共通しており、全体に占める海水生種の割合は90%前後に達する。海水生種の中には、第三紀末に絶滅したとされるNeodenticula kamtschatica等の二次化石も混在するが、第四紀の海水生種であるChaetoceros spp.(休眠胞子)※1とThalassionema nitzschioides の2種で全体の半分以上を占める。

分析結果から、堆積時の環境は陸域に近い浅海域であったと考えられるが、休眠胞子とされるChaetoceros spp.が多く認められたことから、当時の環境に何らかの急激な変化が生じた可能性がある。例えば、海水中の急激な温度変化が生じたり、陸域に近い沿岸部の浅海域で淡水が流入したため塩分濃度が急変した場合などが考えられる。

B 試料D−2:bP6−1(b´層中、深度14.90m)

淡水生種と海水生種の割合がほぼ半々で、「混合群集」※2の様相を呈する。

第四紀の海水生種のうち内湾指標種群のひとつであるParalis sulcata や休眠胞子であるChaetoceros spp.をあわせると全体のおよそ20%を占める。淡水生種は表3−4に示すように多くの種が少量ずつ含まれており、特に優占する種は見当たらない。

以上のことから、本試料の堆積環境は、河口付近あるいは海に近い淡水域が考えられる。

※1 休眠胞子:生育する水域における環境がその種群の生育に適さない環境に変化した場合、環境の回復を待つ間にとる防御体制として殻の形態を変化させたもの。

※2 混合群集:海水、汽水、淡水それぞれの影響が見られる水域(河口付近など)では生育環境の異なる種群が混在して産出する。二次化石も多く含まれる可能性がある。

表3−4.珪藻分析結果一覧

表3−4−1 表3−4中の主な珪藻の解説