(15−1孔)
珪藻分析により、15−1ボーリングの最深部の20.30mにおいては、沿岸部の汽水域の環境下にあったものと推定されたほか、深度17.55m、深度13.74mおよび深度8.30mは、低地帯の河口付近に近い環境下にあった可能性が考えられた。これらの推定された結果は、全硫黄分析の結果からも支持された。
花粉分析から深度13.74m、深度17.55m、深度20.30mは、周辺にはブナ属を主体とする冷温帯落葉広葉樹林が発達していたと共に、ガマ属、イネ科などの草本植物が分布していたと考えられ、ガマ属の生育可能な湿地の環境が推定された。
14C年代測定結果は、すべてが完新世を示した。
(15−2孔)
珪藻分析によれば、15−2ボーリングでは、深度28.70mおよび深度20.10mは沿岸部で河口に近く、河川から供給された土砂の影響を受けるような場所であった可能性が示唆されたほか、深度24.20mは低地帯の河口付近に近い環境下、深度18.10mは陸域の好気的環境にあった可能性が示唆され、深度14.60mは沿岸部の干潟の環境下にあったものと推定された。この結果について本ボーリングにおいても全硫黄分析の結果と整合的であった。
一方、花粉分析から、本ボーリングも15−1ボーリングと酷似した結果を示し、いずれの試料も広範にはブナ属を主体とする冷温帯落葉広葉樹林の発達が推定され、本地点の周囲では、ガマ属、イネ科などの草本植物が分布し、ガマ属の生育可能な湿地の環境が推定された。
14C年代測定結果は、すべてが完新世を示した。
以上をまとめると、15−1、15−2の両ボーリングは、いずれもコナラ亜属帯としてまとめられた。秋田市飯田におけるQuerucus−Fagus (コナラ属−ブナ属)帯(川村,1977)、本荘市葛法におけるHJ−aおよびHJ−b帯(辻,1981)に対比される。時代としては、完新世に相当する。これは、14.80−14.85m試料を除けば、14C年代測定結果とも調和する。
堆積環境としては著しい海成層の証拠がみとめられない、湿地性の花粉化石が多いことより、ボーリングコアの堆積時の環境は後背湿地(back marsh)に近い環境であったと考えられる。