(2)(15−2ボーリング)

本孔では、深度28.70mおよび深度20.10mでは海水生種、海水〜汽水生種、汽水生種および淡水生種の混合群集、深度24.20mでは海水生種と淡水生種の混合群集、深度18.10mでは海水生種のみの貧弱な群集、深度14.60mでは海水生種、海水〜汽水生種および汽水生種の混合群集がそれぞれ認められた。本孔でも海水生種の殆どは、新第三系あるいは第四系下部層からの二次化石と考えられる。

実際の堆積時の環境は、深度28.70mおよび深度20.10mでは、海水生種以外で特徴的に認められた種は、汽水生種のFragilaria fasciculata、Navicula yarrensis、淡水生種のEpithemia adnata 等である。汽水生種のFragilaria fasciculata、Navicula yarrensis の生態性あるいは生育場所としては、河口に近い沿岸から沿岸部の干潟域に生育する種である。淡水生種のEpithemia adnata は、陸域の沼沢地や湿地等の水深の浅い水域の付着生育する種である。なお、淡水生種は、産出種数は多いものの、いずれも低率でありことから、明らかに混合群集の様相を呈している。低率にしか認められない種群それぞれを見ると、低地の沼沢地や湿地に一般的に認められる、いずれも適応能力の高い、広域頒布種である。

以上の検出種群の特徴から、深度28.70mおよび深度20.10mは、淡水生種の産状と汽水生種の構成種群からみて、沿岸部で河口に近く、河川から供給された土砂の影響を受けるような場所であった可能性が高い。

深度24.20mは、二次化石の海水生種以外では、淡水生種を主体として、若干の海水〜汽水生種汽水生種、汽水生種が認められた。淡水生種の組成は、流水不定生種を主体に、流水生種を伴う群集である。

多産あるいは優占した種類は、流水生種のCymbella turgidula、流水不定性種のCymbella silesiaca、Fragilaria ulna、Gomphonema parvulum等である。これらの種群は、15−1ボーリングの深度17.55m等とほぼ同様の群集である。混合群集の様相を呈する点でも酷似している。そのため、本孔の深度24.20mにおいても、低地帯の河口付近に近い環境下にあった可能性が考えられる。

一方、深度18.10mについては、若干の海水生種が検出されたにすぎない。これらはすべて下位層準からの二次化石と考えられる。

二次化石は、元来強固な殻の種が多い傾向にあるが、一度、地層中において殻の表面が他の物質が被覆するなど、溶解に耐えうる条件が整ったために、より残りやすい傾向にあるものと思われる。そのため、陸域等で好気的な環境にさらされた場合では、バクテリアなどにより比較的簡単に分解されてしまうが、二次化石は分解されないで残る場合が多い。本試料から認められた種群も、元来、珪酸分の沈着が厚いために溶解しにくい個体であるが、生育時に生産量の高い種でもある。生育時におけるその種の生産量にも二次化石として残ることに大きく関係があると考えられ、その分、検出率も高くなることは容易に予想される。本試料からの産出種も続成作用に耐えて残った種類であり、堆積時に生育した種は完全に分解消失したものと考えられる。このことは、本層準が、陸域の好気的環境にあった可能性を示唆している。

深度14.60mは、海水生種と海水〜汽水生種および汽水生種が認められた。本層準も海水生種は二次化石であり、堆積時の環境を示すのは海水〜汽水生種および汽水生種と考えられる。

特徴的に認められた種は、海水〜汽水生種のDiploneis smithii、Navicula formenterae、汽水生種のFragilaria fasciculata、Nitzschia granulata等である。

汽水生種のNitzschia granulataは、Diploneis smithiiと同様に海水泥質干潟指標種群である。Navicula formenteraも汽水域の浅瀬の基物に付着生育する種である。

よって、本層準については、沿岸部の干潟の環境下にあったものと推定される。