4−2−2 分析結果

花粉分析の結果を表4−2−1および図4−2−1に示す。表4−2−1は同定した花粉・胞子化石の個体数で示した。表において複数の種類をハイフォン(−)で結んだものは、その間の区別が明確でないものである。

(15−1ボーリング)

深度8.30m(試料番号2)試料は花粉化石の産出が少ない。

深度13.74m(試料番号4)、深度17.55m(試料番号5)、深度20.30m(試料番号7)試料は何れもブナ属が優占して産出し、コナラ亜属、ハンノキ属、クルミ属、スギ属などを伴う。古環境はブナ属を主体とする冷温帯落葉広葉樹林の発達が推定される。また、ガマ属、イネ科などの草本植物が分布していたと考えられ、ガマ属の生育可能な湿地の環境がうかがえる。

(15−2ボーリング)

本コアの結果は15−1孔と非常に良く似た結果を示す。

いずれの試料もブナ属が優占して産出し、コナラ亜属、ハンノキ属、クルミ属、スギ属などを伴う。古環境はブナ属を主体とする冷温帯落葉広葉樹林の発達が推定される。また、ガマ属、イネ科などの草本植物が分布し、ガマ属の生育可能な湿地の環境が推定される。

以上のように15−1と15−2孔の花粉化石群集は非常に良く似て共にブナ属−コナラ亜属帯としてまとめられるので、同時期の堆積物として対比される。このようにブナ属−コナラ亜属帯としてまとめられる花粉化石群集は、秋田市飯田におけるQuerucus−Fagus(コナラ属−ブナ属)帯(川村,1977)、本荘市葛法におけるHJ−aおよびHJ−b帯(辻,1981)に対比される。この対比に従えば、両孔は完新世の堆積物に相当することになる。両孔の14C年代測定は15−2孔の14.80−14.85m試料を除けば、いずれも1万年前よりも新しく、完新世を示しており、花粉分析から推定される時代と調和する。

なお、本調査において、日本では更新世末に絶滅したとされているハリゲヤキ属近似種が産出する。完新世以前で、ブナ属とコナラ亜属が優占する花粉化石群集は、最終間氷期の堆積物とされる男鹿半島の安田層〜潟西層の花粉化石群集(白石・竹内,1999)、山形県川樋川盆地の堆積物で深度約14mに認められるST−UA帯の花粉化石群集(日比野ほか,1991)等があげられる。しかし、14C年代の測定値が3万年前を超える古い値を示さないことから、この時代の化石群集に対比されない。ハリゲヤキ属近似種の産出は、両孔ともにマツ科(トウヒ属、ツガ属、モミ属、マツ属など)、フウ属、カリアグルミ属などの第三紀から再堆積したと考えられる花粉化石が多く含まれることを考慮すると、周辺の段丘から再堆積した可能性が高い。

以上のことから本調査における15−1孔と15−2孔はいずれも完新世の堆積物と考えられる。

表4−2−1 花粉化石分析結果

図4−2−1 15−1孔における花粉化石群集の変遷

図4−2−2 15−2孔における花粉化石