一方、衣川より南側の海岸線には高度不連続のリニアメント(Z−1〜3長さ計7.8km)が認められ、海食崖ではあるがきわめて直線的であり、断層による変位発生の可能性は否定できない。この場合、海岸線が侵食後退している点を考慮すると東側隆起の断層は海岸線よりも海側に存在することになる。
このように調査範囲の陸域にはリニアメント判読により活断層を認定することはなく、活断層としての北由利断層は存在しないものと判断した。しかし、衣川より南側では海域に活断層が存在する可能性はある。これは長さは7.8km程度、東側隆起で、平均変位速度としては隆起側のみであるが後述する丘陵部の隆起速度が考えられる。
なお、陸域の地質断層の実態は細い断層粘土から成る層面断層と著しい褶曲構造を特徴としている。第三紀鮮新世の地層とは言え岩石化が進んでいるので、最近の断層活動があれば地層の破断や乱れ(破砕構造)が観察されるはずである。しかし、露頭においては破砕性状は軽微であり、主に褶曲運動により形成された構造であると推測される。