5−2 リニアメントの地質

空中写真判読したリニアメントの分布は1/5万地質図幅による地層が急傾斜する海岸寄り部分にやや集中する傾向がある。これは砂岩と泥岩の差別侵食が発生しやすい地質構造という点で理解しやすい。

リニアメントの性状としては、W−9、10リニアメント(差別侵食)の北側延長部に露頭があり、いずれも幅2〜3cm以下の層面断層(地層方向の断層)が存在するのみである。周辺の幅1〜2m部分がやや砕け易い性状を呈するが、これらがリニアメントの実態の一端と考えられる。

その他のリニアメントではリニアメントを挟んで砂岩と泥岩が境する場合が大部分(表4−1)である。このようなことからリニアメントの成因は差別侵食によるものと考えられる。

海岸線のリニアメントZ−1〜3(長さ計7.8km)では新第三系の露頭が三川の海岸断崖基部や芦川・親川河口部のリニアメント上に分布し、リニアメントそのものが断層ではない。しかし、海側(西側)に断層が存在し、侵食後退により直線状の現海岸線が形成された可能性は考えられる。

なお、リニアメントではないが1/5万地質図幅による地質境界の断層が三川の砂採取場跡に露頭している。ここでは長さ300mにわたって連続的に地層が観察され、天徳寺層の泥岩優勢な天徳寺相と砂岩・泥岩の互層相の境界断層で、ほぼ図幅位置に一致する。この断層は幅1〜3cmの断層粘土を有する層面断層で、周辺の地層は破砕の影響をほとんど受けていないように観察される。

このような小規模な層面断層と顕著な褶曲構造は、地質断層としての北由利断層の特徴を示していると考えられる。