判読したほとんどのリニアメントは鞍部と直線谷を特徴とし、三角末端面や連続する崖が二、三の箇所で認められる。断層変位地形としてはリニアメントを挟む両側の高度不連続が、衣川より南側の海岸に沿って(Z−1〜3長さ計7.8km)認められるほか、散在する短い3本のリニアメントで認められる。
活断層研究会(1991)の活断層としての確実度(表4−3)によると、リニアメントは何れも確実度Vとなる。また、桑原(1987)による活動性の評価基準(表4−2)では、高度不連続のリニアメント3本はランクのL3と評価され、その他の大部分のリニアメントはL3に及ばない<L3の評価になる。
新編「日本の活断層」では伏在断層と合わせて確実度V(表4−3)のリニアメントが表示されている(図4−1−1、図4−1−2、図4−1−3、図4−1−4、図4−1−5)。このリニアメントは君ケ野川と交差し、延長部が衣川へ伸びている。しかし、いずれの箇所も完新世段丘に上下落差の変位は認められない。
リニアメントの成因については、1/5万地質図幅の地質境界とよい整合性を示し、砂岩と泥岩、または安山岩との境界での差別侵食が要因と考えられる。これはリニアメントTグループが背斜プランジの構造を反映した分布形態(図4−1−1、図4−1−2、図4−1−3、図4−1−4、図4−1−5)を示すことからも伺える。
以上のように、内陸側にはリニアメントに断層変位地形はほとんど認められず、その成因は大部分が差別侵食と考えられることより、地質断層や地質境界ではあっても活断層ではない、すなわち、第四紀後期の繰り返し活動を示さない非活断層と判定した。一方、衣川より南側の海岸線には高度不連続のリニアメント(長さ7.8km)があり、海域に活断層が存在する可能性は否定できない。