2−6 総合解析

(1) リニアメント;基盤の新第三系の構造を反映した差別侵食によるものが大部分である。したがって、陸域に南北方向の連続する活断層は存在しないと判断した。しかし、衣川より南側の海岸沿いのリニアメントでは高度不連続が認められ、海域に活断層が存在する可能性は否定できない。

(2) 隆起速度;段丘認定作業の信頼度をもとに地形面の評価を行い、完新世段丘の信頼度の高い箇所で沖積氾濫面からの比高を測定して隆起速度を算定した。

また、中位段丘は海成段丘として海水準変化を算定した。これらの結果、由利丘陵では完新世段丘から推定した隆起速度は0.6m≧/103年、中位段丘は0.3〜0.4m/103年となり、子吉川流域と同程度となった。なお、由利丘陵でも北側の鮎川、境川では隆起速度が小さくなり、これはなだらかな海岸地形や新第三系露頭が海岸で見られない状況などと整合的である。

(3)海域の地質構造;再処理・再解析した断面図では海岸線から沖合い数10kmに至る範囲で、日本海沿岸の特徴的な堆積盆地からなる地下構造が観察された。また、有孔虫や石灰質ナンノ化石などの微化石データを基にA〜H層の層序区分を試錐データで行い、各解釈断面図で地質構造を明らかにした。

堆積盆地内には背斜構造に伴って東傾斜または西傾斜の逆断層が存在し、北由利断層もその内の一つと考えられる。

(4)断層の分布と活動性:反射法地震探査既往データの再解析によると、KY−2断層が調査地域南半部の直線状の海岸に沿って、長さ18km、東傾斜の逆断層として分布する。この断層は約90万年前のG層を1,000m以上変位させ、試算すると103年あたりの平均変位量は1.1m以上となる。

また、堆積盆地の背斜構造に伴って西傾斜のKY(W)−1、2断層が分布する。これらは北由利断層とは形態を異にするが、KY−2の延長上または近接して併走する。このほか、沿岸から離れるが堆積盆地西縁のA−1、1’断層や、調査地域南側沿岸部のB−1断層等が分布する。

今回の既往データの再解析では浅層部の詳細な検討ができないため、いずれの断層についても最新活動時期は明らかでない。このため次年度以降、KY−2、KY(W)−1、2断層等について浅層部の調査が必要である。