6−1−2 中位段丘3面(M3)

中位段丘3面(M3)は、離水後の堆積物の底部に阿蘇4テフラ(Aso−4)や喜界−葛原テフラ(K−Tz)が分布することで特徴付けられる。M3面は東雲地区に広く分布しており、大部分が河成層であるが、磐断層付近を境として西側は海成層に移行する。この汀線に近い海成層上位の砂質ローム下部からAso−4とK−Tzの可能性があるガラスが検出された。Aso−4およびK−Tzのガラス含有率は低く、必ずしも降下層準を示すものではないため地形面の形成時期が確定したとは言い切れない。

Aso−4の降下時期は8.5〜9万年前のほぼ酸素同位体ステージ5bの小海退期であることが知られており、K−Tz はAso−4直前に降下したとされている。このことからM3面を同位体ステージ5cの地形面と推定した。これは南関東の小原台面に対比される。

一方、Aso−4とK−Tzとにみられるガラスが検出された地点の北東約4kmの外荒巻では、M3面を構成する河成砂礫層の下位に分布する海成砂層中にテフラが認められ、クッチャロ−羽幌テフラ(Kc−Hb)に対比される可能性がある。町田他(1996)は、羽幌において同位体ステージ5e海成面の汀線から15m程度低い位置で、ほぼ離水層準にあるKc−Hbを確認している。本調査地でテフラが確認された地点は標高25m程度であり、畑谷地区のM1面汀線より30m、M2面汀線より20m程度低い。しかも各汀線との間には小手萩断層があり、露頭は断層隆起側に位置する。したがって、Kc−Hbの降下期にあたる同位体ステージ5eから5dに向かう海退過程において、この地点が引き続き海面下にあった可能性が高い。

M3面は米代川北側の東雲地区に広く分布し、大部分は河成面である。同位体ステージ5cの海進期には、米代川は北へ向かって開いた扇状地を形成し、扇状地の末端は海面に没していたと推定される。また、米代川の南では海浜部に砂丘が成長し、背後に潟が形成されていた可能性がある。