6−1−1 中位段丘1面(M1)および中位段丘2面(M2)

中位段丘1面(M1)と中位段丘2面(M2)は、ともに離水後の堆積物の底部に洞爺テフラ(Toya)が分布することで特徴付けられる。すなわち同じテフラ層序を持つ地形面が2面存在し、より高位の面をM1面、低位の面をM2面と判定した。畑谷地区のM1面とM2面とでは、ともにロームの底部にToyaが確認され、宮内(1988)のテフラ層序と一致した結果が得られた。森岳地区では、M1面を構成する海成砂層の上面にみられる生痕をToyaが充填している露頭が確認された。また、M2面では海成砂礫層の上位に分布する泥炭層中にToyaが確認され、畑谷地区のM1やM2面と同じ層位関係を示している。

Toyaの降下時期は、10〜12万年前のほぼ酸素同位体ステージ5dの海退期であることが知られるようになった。したがって、M1面やM2面はともに同位体ステージ5eの地形面と認定される。M1面は南関東の下末吉面に、M2面は引橋面に対比される。

M1面とM2面とは、ともに海成の砂層、砂礫層を主体とした堆積物によって構成され、同位体ステージ5eの海進期には、畑谷地区から森岳に至る調査地の広い範囲が海域となったことを示している。

なお、成合東方の外岡付近に分布するM2面には潟湖成の砂・シルト互層が広く分布する。M2面を形成した同位体ステージ5eの海進期に汀線より数m低い位置に潟湖が形成されていたとは考えにくい。後述するように西側に隣接する成合地区では、古期砂丘が主として同位体ステージ5cに成長しているため、砂丘背後に形成された潟湖の形成時期も同位体ステージ5cの可能性がある。空中写真判読では外岡付近の潟湖成面と森岳付近のM2海成面との間に明瞭な高度差は認められず、ほぼ一連の地形面の中に形成時期のギャップが生じていることになる。この解釈として、同位体ステージ5cの海進期の潟湖が、同位体ステージ5eの海進期に形成された海成面と同程度の高度に進入し、海成面を潟湖成層が薄く覆うような形成過程が想定される。

本調査の地形面区分では外岡、中沢、および森岳に広く分布する一連の中位面をM2面相当(同位体ステージ5e)として扱うが、変位基準や変位速度を議論する場合には、M3面相当(同位体ステージ5c)の可能性があることを考慮する。