分析した試料のうち、11試料は広域テフラとの対比が確実であり、別の6 試料についても広域テフラに対比される可能性がある。残る9試料についてはガラスの濃集度が低く、対比困難であった。
対比された、あるいは対比される可能性のある広域テフラは以下のとおりである。
阿蘇4(Aso−4) :降下年代85〜90ka
喜界葛原(K−Tz):降下年代90〜95ka
三瓶−木次(SK) :降下年代100ka
洞爺(Toya) :降下年代90〜120ka
クッチャロ−羽幌(Kc−Hb):降下年代100〜130ka
なお、上記のテフラ降下年代は日本第四紀学会(1996)による。
各試料の分析結果は以下のとおりである。
分析番号1(試料番号SA−5):ガラスの屈折率と斜長石の屈折率の測定からToyaへの対比は確実。ただしテフラの純度は低い。
分析番号2(試料番号SA−0):ガラスの屈折率はSA−5よりやや高いが、斜長石の屈折率分布は酷似する。Toyaに対比される。
分析番号3(試料番号SY−39):ガラスの濃集度が低く広域テフラへの対比は困難である。
分析番号4(試料番号SA−11):火山ガラスおよび斜長石の特徴的な低い屈折率から少量のToyaテフラの混入が推察される。
分析番号5(試料番号SY−41):3種以上のテフラが混在するとみられるが層準決定は困難である。
分析番号6(試料番号SY−42):ガラスは微量だが、屈折率と形態からSKまたはToyaの可能性がある。
分析番号7(試料番号SA−1):ガラスは微量だが、屈折率と形態からSKまたはToyaの可能性がある。
分析番号8(試料番号SY−10):ガラスの含有率は32%である。ガラスの形態、屈折率、斑晶鉱物の組合せ、斜方輝石の屈折率、および層準を踏まえて、周辺地域の類似テフラを検討すると、Kc−Hbへの対比の可能性が指摘される。
分析番号9(試料番号SY−31):ガラスの濃集度が低く広域テフラへの対比は困難である。
分析番号10(試料番号SY−36):ガラスの濃集度が低く広域テフラへの対比は困難である。
分析番号11(試料番号SY−29):3種以上のテフラのガラスが混在するとみられるが、うち2種類はK−TzおよびAso−4起源と判断される。
分析番号12(試料番号SY−30):SY−29と同様の結果が得られる。
分析番号13(試料番号SY−5):ガラスの濃集度が低く広域テフラへの対比は困難である。
分析番号14(試料番号SY−6):火山ガラスは検出されない。
分析番号15(試料番号SY−40):ガラスの濃集度が低く広域テフラへの対比は困難である。
分析番号16(試料番号SY−37):ガラスの濃集度が低いが、K−Tzガラスを少量含む可能性がある。
分析番号17(試料番号SY−44):ガラスの屈折率と斜長石の屈折率の測定からToyaへの対比は確実。ただしテフラの純度は低い。
分析番号18(試料番号SY−43):ガラスの屈折率と斜長石の屈折率の測定からToyaへの対比は確実。ただしテフラの純度は低い。
分析番号19(試料番号SY−34):複数起源のテフラガラスを含む。特徴的なガラスの形態と単離してはいるがβ−石英を伴うことから、K−Tzのガラスを混入する可能性がある。
分析番号20(試料番号SK−2):ガラスの濃集度が低く広域テフラへの対比は困難である。
分析番号21(試料番号SK−1):ガラスの濃集度が低く広域テフラへの対比は困難である。
分析番号22(試料番号SY−45):特徴的なガラスの形態と屈折率から少量だがAso−4ガラスを含むことが確実である。
分析番号23(試料番号SY−46):ガラスの色調、形態、屈折率、および大型の褐色がかった緑色角閃石を含むことからAso−4のほぼ降下層準と判断される。
分析番号24(試料番号SM−2):ガラスの屈折率と斜長石の屈折率の測定からToyaの混入は確実とみられる。
分析番号25(試料番号SY−25):ガラスの屈折率と斜長石の屈折率はToyaより高く確実に識別される。SK漂流軽石と同定される。
分析番号26(試料番号SY−20):ガラスの色調、形態、屈折率、斜方輝石および大型の褐色がかった緑色角閃石を含むことからAso−4と判断される。
表4−4−1 テフラ分析結果一覧表
図4−4−1−1 広域テフラ確認地点位置図(北半部)
図4−4−1−2 広域テフラ確認地点位置図(南半部)