4−3−2 沖積面の傾斜状況

図4−3−3に能代断層が伏在すると推定される付近の沖積面の標高点を示し、標高点の分布から読み取られる沖積面の傾斜方向を図示した。この図から以下のことが判る。

畑谷地区では、塙川や竹生川筋に分布する沖積段丘1面が西へ傾斜しており、中位面の撓曲構造に調和的である。

東雲地区では、中位面の撓曲構造の西に分布する沖積段丘2面が東へ傾斜しており、中位面西側の崖線直下に落合沼を始めとする湿地が形成されている。

米代川河口部は、新期砂丘が広く分布するため全体に起伏に富んでいるが、北岸の新釜谷地付近や南岸の中和町付近では、沖積段丘2面が東へ傾斜している。一方、米代川南岸に広く分布している沖積段丘1面は全体として標高8〜9mに平滑な面を形成しているが、河戸川付近から西へ向かって高度が低下し標高6〜7mとなる。

成合地区の沖積段丘1面の高度は、浅内沼付近が最も低く、東西両側へ向かって上昇する。

八郎潟北岸地区では、能代地震の隆起域に相当する沖積段丘3面やその高位の沖積段丘2面の汀線が浅内沼付近から連続する低標高部で消失する。これより東側では八郎潟湖底の勾配を反映して南南西へ傾斜している。

以上のような沖積面の勾配は、河川、潟、および砂丘などの堆積勾配を反映する部分もあるとみられるが、大沢他(1985)による深部の浅内向斜の構造と調和的である。この向斜構造は八郎潟北岸地区に想定される能代断層の沈降側に分布する湿地に延長され、能代断層の前縁部に完新世の向斜構造が存在することを示唆している。

この向斜構造の位置は、八竜町大曲西方から、成合地区浅内沼付近、東雲地区の落合沼付近を通り、畑谷地区で海浜部へ向かうとみられる。途中米代川の横断部では、自然堤防を越流して海浜へ直接流下する沖積段丘2面の古流路の位置に想定される。