(1)能代断層

中位段丘面の傾動は、空中写真で判読された中位段丘の傾動、撓曲部に広く確認された。傾斜した中位段丘堆積物を実際に観察できる箇所は、最近造成が進んでいる成合地区に多い。成合地区では逆川断層B、C、およびDの西側において、MD段丘面を構成する砂丘砂や、その下位に分布する海成の砂礫層が西へ5〜20°で傾斜しているのが観察され、特に逆向き断層上昇側では10°以上の傾斜を示すことが多い(巻末図版5および14)。また、逆川断層の東側では、MD段丘の構成層が僅かに東へ傾斜しているのが認められる(巻末図版3のP7)。

空中写真で沖積面に判読される旧汀線では、高さ1〜4m程度の崖地形が認められる。しかし、崖地形両側に分布する地層の同一性が確認される箇所はなく、浸食地形と推定される。また、調査地の段丘堆積物にはしばしば重力性の構造とみられる正断層の露頭が観察される(例えば巻末柱状図CY−22)。しかし、能代断層本体の変位センスと一致する東側隆起の逆断層は確認されない。これらのことは能代断層の基本的な変位形態が撓曲構造であることを示唆している。

未区分低位段丘は、能代断層の活動に関連して形成された可能性があるが、現地では国道付近の地形改変によって地形面そのものを認識できる箇所が少ない。また、この段丘を構成する地層も確認できない。

米代川流域の沖積段丘は、米代川南岸では都市化が進んでいるため、原地形を良好に保存している箇所は少ない。米代川北岸では、沖積段丘1面と2面との間の河食崖の高度差は0.5〜1.5m、沖積段丘1面と3面との河食崖は約5mである(巻末図版6)。また、現地の地形観察では、沖積段丘面の撓曲変位は認識できない。

 八郎潟北岸地区の沖積段丘は、八郎潟の干拓、整備によって改変されていることが多い。能代断層の沈降側には空中写真で湿地が判読されるが、現在は失われている。能代地震の隆起域に相当する沖積段丘3面の汀線は、富岡新田以西では地形改変によって失われている。久米岡新田以東では、整備された水田の畦に高さ70cm程度の高度差が残されている(巻末図版7)。沖積段丘2面の汀線は、水田の畦に高さ50〜100cm程度の高度差として残されていることが多い(同)。沖積段丘1面(中位)の汀線付近では畑や水田の面にわずかな高度差を認識できるが、沖積段丘1面(低位)ではほとんど認識できない。