(3)中位段丘堆積物(古期砂丘堆積物を含む)

中位段丘堆積物は調査地に最も広く分布し、その構成層は堆積物の形成環境を反映して、海成層、河成層、潟湖成層、および砂丘堆積物に大別される(巻末図版2、3)。海成層は砂層もしくは砂分に富んだ砂礫層からなり、生痕化石を伴うことがある。礫は平行な並びを示すことが多い。河成層は基質がシルトや粘土分に富んだ砂礫層からなり、しばしばシルトの薄層を伴う。一般に上部はシルト質となり、斜交葉理が認められることもある。潟湖成層は砂・シルト互層を主体とする。砂丘堆積物は一部にシルト薄層や泥炭を伴った厚い砂層からなる。また、中位段丘堆積物にはその形成時期を特定するための有効な指標となるAso−4テフラ、Toyaテフラをはじめとした広域テフラが認められる(巻末図版4)。

@ 中位段丘1・2堆積物は、畑谷地区から森岳地区に至る広い範囲に分布し、主として海成層からなる。層厚は確認できる部分で5〜10m程度である。畑谷地区や森岳地区の比較的汀線に近い地域では礫が平行に配列した海浜の砂礫層が卓越するが、汀線からやや離れた地域では砂層を主体とする。東雲地区に孤立した分布を示すM2面の構成層は砂層を主体とし、一部に薄いシルト層を伴うことから砂州ないし砂丘に近い性格を示す。成合東方の外岡付近では海成層の上位に潟湖成堆積物が広く分布する。また、中沢地区でも一部で河成〜潟湖成層を載せる。外岡付近や中沢地区の一部では、中位段丘1・2堆積物の上位をより新しい堆積物が覆っている可能性がある。本堆積物は、厚さ1〜2mの橙褐色のロームに覆われており、ロームの下部は一般に砂質である。

A 中位段丘3堆積物は、東雲地区に分布し、離水前の堆積物は河成層を主体とするが磐断層付近を境として西側では海成層に移行する。層厚は確認できる部分で5〜10mである。河成層は基質が粘土分に富んだ礫層を主体とし、シルトの薄層を伴う。礫層の上位に厚さ50cm程度の砂・シルト互層を伴うことがあり、その上位を淡褐色〜明灰色塊状のシルト層が覆う。一方、礫層の下位には不整合面を介して平行ラミナを伴う海成の砂層が分布することがある。西側に分布する海成層は礫の並びを伴う海浜の砂礫層であり、砂質部に生痕化石が認められることがある。本堆積物は厚さ1〜2mの橙褐色〜淡褐色のロームに覆われており、河成層上部のシルト層との境界は一般に漸移的である。

B 中位段丘4堆積物は、畑谷地区、米代川北岸の東雲地区、および八郎潟北方の三種川、鵜川川の流域などに分布する河成層である。層厚は確認できる部分で最大15m程度である。畑谷地区では礫層に頻繁に砂やシルトの薄層が挟在する。東雲地区では基質が粘土分に富んだ礫層を主体とし、上部の厚さ50cm程度の砂・シルト互層にはクロスラミナが発達する。八郎潟北方では砂・シルト互層が見られ、潟湖成層に近い層相を示す。本堆積物は厚さ1m前後の淡褐色のロームに覆われる。

C 古砂丘堆積物は、成合地区に分布し、厚さ20〜30mの砂層からなる。砂層上部には砂丘特有の「ちりめん皺」状のラミナが認められ、砂丘間の低地では薄いシルト層を挟在することがある。砂層の底部から5〜10mにToyaが連続良く分布し、この層準付近は一般に平行ラミナが発達する。Toyaの上位10〜20mにAso−4が認められることがある。Aso−4の上位にはやや褐色を帯びた砂層が4m程度載ることがあり、ロームに漸移する。逆川断層より東側の地域ではAso−4の下位4〜6mに泥炭層を挟在することが多く、泥炭層付近の砂層に海緑石が含まれている。古砂丘堆積物とその下位に分布する中位段丘1・2堆積物の境界は、後者に礫が含まれていないかぎり判定しにくい。Toyaの下位には中位段丘1・2堆積物に相当する海浜の砂礫層とともに、砂州の堆積物も広く分布していると推察される。