調査地には新生代第三紀中新世〜第四紀更新世前半の女川層、船川層、天徳寺層、笹岡層、および中沢層が分布し、これらを覆って高位、中位、および低位段丘堆積物と沖積層が広く分布する。
女川層〜中沢層の地層区分については大沢他(1984、1985)にしたがった。しかし、的場(1992)が指摘するように、反射法探査の解析対象となる能代断層沈降側は鮮新世末〜更新世中頃においても沈降域に置かれ、隆起側に分布する天徳寺層、笹岡層、および中沢層が沈降側では同時期に堆積した男鹿半島の船川層、北浦層、および脇本層の堆積環境を示すことが予想される。したがって、地質総括表では的場(1992)や白石・的場(1996)による男鹿半島の層序との対応を併記し、必要によってその対応関係を延べながら議論する。
本調査は、調査地に最も広く分布し、断層の変位基準となる段丘堆積物の層相と後期更新世以降のテフラ層序とに重点を置いた。段丘堆積物の区分は、基本的に空中写真判読による地形面区分、地表踏査時に作成した露頭柱状図による堆積環境の整理、およびテフラ層序に対応している。
なお、畑谷地区に2面の地形面が判読される高位段丘面の構成層は、同位体ステージ5eより前に堆積したとみられ、巻末に添付した地質平面図(付図2)では一括した。同様に、同位体ステージ5eに相当する地形面を構成する海成の砂層〜砂礫層を主体とする堆積物は中位段丘1・2堆積物として一括した。また、同位体ステージ5a以降の最終氷期の河成堆積物からなる低位段丘1面および2面の構成層も低位段丘堆積物として一括した。さらに沖積段丘1、2、および3面の構成層は、形成年代や成因が地域的に異なっている可能性があるため、沖積層として一括した。