(3)低位面群

低位段丘は、畑谷地区水沢川の流域、三種川の流域、および成合地区〜東雲地区の中位段丘の西縁に分布する。

@ 水沢川流域では、標高10〜70mに15〜20/1,000の勾配を示す扇状地面が2面識別され、高位の面を低位段丘1面(L1面)、低位の面を低位段丘2面(L2面)とした。L1面は主として水沢川の南側に、L2面は北側に扇状地を形成し、中位面を側方から浸食する。海浜部では新期砂丘に覆われる。

A 三種川流域には、沖積面との高度差数m以下の低位面が識別される。水沢川流域のように複数の面が識別されることはなく、仮に低位段丘1面(L1面)とした。三種川の下流部では沖積面との高度差を次第に減じる。

B 中位段丘の西縁部には、幅最大100m程度の低位面が南北に狭長な分布を示す。東雲地区では標高8〜10m、成合地区では標高12〜13mに分布し、中位面に対して現海岸方向の崖線を形成することから海成段丘と推察される。本調査ではこの面を仮に未区分低位面(L面)とした。この面の形成時期と成因には、以下の4通りの見方が可能だが、本年度調査時点では結論に至らない。

(a) 未区分低位面が中位段丘4面(M4面)相当の海成段丘面で、崖線はM3面およびMD面を側方から浸食した海食崖とする見方。

(b) 未区分低位面が約6万年前以降の最終氷期の海成段丘面で、崖線はM3面およびMD面を側方から浸食した海食崖とする見方。この場合、白石(2000)による男鹿半島の相川段丘に相当する低海水準期の海成面が分布していることになり、比較的大きな隆起速度を想定することになる。

(c) 未区分低位面が縄文海進期の海成面であり、崖線はM3面およびMD面を側方から浸食した海食崖とする見方。この場合、後述する八郎潟北岸や米代川の沖積面群の更に高位に沖積面が分布することになり、沖積面の形成時期や縄文海進以降の隆起速度の想定に見直しが必要となる。

(d) 未区分低位面が中位段丘3面(M3面)相当および古期砂丘(MD面)の海成段丘面で、崖線を断層崖とする見方。この場合、崖線延長上の沖積面に変位が認められないので、この断層崖に縄文海進以降の変位はない。