大沢他(1984、1985)は、調査地には「能代衝上断層群」に加え、いわゆる「油田褶曲方向(N−S性)」の構造が発達するとしている。それらは5万分の1地質図幅「能代(1984)」内の夏井背斜、同「森岳(1985)」内の浅内向斜、鵜川背斜、川尻向斜、外背岡斜、中沢向斜、および森岳断層などである。そして、これらの構造の活動は、当地域の船川層堆積時に始まる長期間の累積的変位を示しており、試掘井のデータでは、地下浅部での緩傾斜の褶曲も深部では急傾斜を示すことが多いとしている。
また、米代川沿いの水準点変動の解析では、現在も褶曲構造が成長していて、背斜部が向斜部に較べて相対的に隆起する傾向を示すとしている。これらの構造のうち明確に第四紀後期の活動性を示すものは、能代断層の活動に関連して形成された能代撓曲と森岳断層の活動に関連した中沢撓曲とである。いずれも東西幅約1kmにわたり中位段丘とその構成層が西へ傾き下がっている。中沢撓曲の変位量は能代断層に比較して小さいが、南部へ向かって大きくなる傾向が認められるとしている。
また、能代断層の東側には、北から高野野断層、磐断層、小手萩断層、および逆川断層が分布し、それらは能代断層に伴う共役性断層であるとしている。中沢撓曲付近にも同様の性格を持つ中村断層を指摘している。