3−8 能代断層と秋田県活断層調査の今後について

平成12、13年度の調査を通じて、能代断層は逆向き断層群を伴う延長22km以上の伏在撓曲断層であり、最新活動時期は1694年(元禄7年)能代地震の可能性が高く、その1回前の活動は4,000〜6,000年前に、2回前の活動は10,000〜13,000年前であることが推定された。後期更新世以降の平均変位速度は1.0/1,000年程度、鉛直成分の単位変位量は約3.0mないしそれ以上であり、再来間隔は4,000〜6,000年程度と見積もられる。また単位変位量から地震規模はM7.5級と想定される。

能代断層の活動性について、その全体像が明らかになってきた反面、反射法地震探査の結果では、浅内沼から八郎潟北岸にかけて、現海岸付近に能代断層とは別の撓曲構造が推定された。浅内沼〜八郎潟北岸の能代断層沈降側は、同時に海浜部の撓曲構造の隆起側にも位置している。完新世の堆積物の年代と分布高度を検討した結果、浅内沼〜八郎潟北岸の能代断層沈降側は、約7,000年前以降ほとんど沈降しておらず、海浜部の撓曲構造の完新世における活動性が示唆される。

能代断層本体は八郎潟北岸で変位速度が低下し、その南限に近づいていることが予想される。しかし海浜部の撓曲構造が更に南方へ延長される可能性も否定できない。南方延長の八郎潟地域には、近い将来大地震を発生し得る区域、即ち地震空白域の存在が指摘されている(垣見・粟田,1985)。また830年天長地震(M7)の起震断層や、男鹿半島の傾動隆起との関連性も解明されていない。これらは今後の重要な検討課題に挙げられる。

一方、能代断層や海浜部の撓曲構造を含む能代断層帯の南方延長として、秋田県南部地域に分布する北由利断層帯(活動度A級、長さ30km)の活動履歴や活動性も明らかにされる必要がある。北由利断層については、断層の位置が現海岸線付近から更に西側の海域に分布する可能性があり、調査は海域から陸域にかけて長く横断する広域的な調査計画を策定する必要があるものと考えられる。陸上においては、最終間氷期以降の海水準変動と関連付けた地形的検討に基づく隆起速度の把握、隆起海成段丘の抽出とその年代把握など、能代地域における調査手法を発展的に適用することが有効とみられる。こうした調査手法によって海浜に分布する伏在撓曲断層の活動性が把握されるものと期待される。

八郎潟地域における能代断層帯と、秋田市南部の北由利断層帯とを総合的に評価することは、秋田県の都市域において適切な地震防災計画を策定する上で最重要課題であると考えられる。