(2)沈降側の地質および構造

沈降側の地質状況を隆起側と関連付けて考察するため、A2面とA3面との延長に2本の東西測線を設定し、ボーリング・ジオスライサー調査を実施した。調査によって得られた東西測線の地質断面図を図3−4−3(A3面延長)と図3−4−4(A2面延長)に示し、検討結果を以下に記述する。

A2測線には西からB−4・B−51・B−5・B−53・G−5・G−6・B−64・B−63およびB−71の計9孔を配置した。A3測線には西からB−1・B−2・B−52・B−3・B−54・G−7・B−56・G−8・B−65・B−66・B−69・B−70およびB−7計13孔を配置した。

 ・沖積層

沈降側には厚さ最大10m程度の沖積層が分布する。沖積層は西へやや撓みながら傾斜する。

沖積層の上部2m程度は砂質堆積物を主体とし、海浜からの飛砂が堆積した可能性もある。その下位は腐植物・貝化石・生痕を伴う暗灰色のシルト〜砂質シルトを主体とする堆積物からなり、生物撹乱が著しく層理面が残されていない部分が多い。また合弁の二枚貝やカキを伴い、海水の影響下で堆積したことを示す。

B−1孔の深度3.8mからは十和田中掫テフラ(To−Cu:降下年代5.5ka)の軽石が検出された。沖積層底部の試料からは、B−4孔において10,520〜10,700cal.yBP、B−5孔では8,380〜8,600cal.yBPの14C年代値が得られ、浅内沼測線地区と同様に、約10,000年前以降に堆積した完新世の堆積物であることが確認された。一方、沖積層の上部の試料からは、B−1孔で910〜980cal.yBPの、B−2孔で2,920〜3,160cal.yBPの、B−3孔では2,830〜3,090cal.yBPの14C年代値が得られた。B−2孔・B−3孔周辺は、干拓整備前の空中写真では湿地となっており、他の沈降側地域と比較して離水が遅れている。

・洪積層

沖積層直下には特徴的な白色ないし淡橙色の色調を持った塊状粘土層が追跡される。塊状粘土層が生物撹乱に伴ってパッチ状の粘土片となって沖積層の底部に挟在することもある。この塊状粘土層は浅内沼測線沈降側のボーリング試料にも認められ、調査地付近で中位面を覆うローム層と類似した層相を示す。B−1孔の塊状粘土からは、浅内沼測線沈降側の同位体ステージ3〜4に相当するトウヒ属、ハンノキ属を主体とする花粉群集が得られた。

塊状粘土層の下位は総じて砂質の層相を示すが、A3測線では頻繁に泥炭層や腐植質砂層を挟在する。泥炭層や砂層に挟在するシルト層はすべて30,000yBP以上の14C年代値を示す。また砂層上部や砂層に挟在する泥炭層からは、浅内沼測線沈降側の同位体ステージ5に相当するスギ属を多く含む花粉群集が得られた。砂層は撓曲構造部に近いB−3・B−5・B−51およびB−52孔付近では礫質となるが、隆起側では再び礫率が低下する。また撓曲構造部付近ではしばしば褐色に酸化された色調を呈する。

図3−4−3 八郎潟北岸東西測線地質断面図(A3測線)

図3−4−4 八郎潟北岸東西測線地質断面図(A2測線)