(1)隆起側の層序

隆起側の層序は広域テフラの層序に基づいて検討した。以下、浅部から層序を記述する。

古期砂丘堆積物:B−7孔の深度19〜21m(標高19〜21m)、B−9孔の深度11〜13.5m(標高18.5〜21m)に分布するシルト層を境として、便宜的に上部と下部に分けられる。上部は塊状無層理の中粒砂からなるが、一部1〜2mの区間に葉理が認められることがある。またB−7孔では深度4.5m(標高35.5m)に厚さ30cmの泥炭層を挟在する。洞爺テフラ(Toya:降下年代110〜115ka,同位体ステージ5d)は、B−7孔の古期砂丘堆積物の深度14.5m(標高25.5m)に、厚さ5cm程度の特徴的な淡桃色の色調を示す降下火山灰として確認された。古期砂丘堆積物に挟在するシルト層は2孔間で分布標高がほぼ一致することから、一連の堆積物と予想される。B−7孔では淡水生湿地性種群の珪藻群集が含まれていることから、砂丘間低地に形成された湿地の堆積物とみられる。シルト層の下位は再び風成砂とみられる中粒砂主体の層相となる。

古期砂丘離水前の堆積物:B−7孔では深度約28.5m(標高11.5m)、B−9孔の深度18.5m(標高13.5m)以深の礫を含む区間である。いずれの孔でも径2cm以下の円礫を主体とし、基質が砂分に富んでおり、海浜に堆積した砂礫と推定される。

中位段丘構成層の形成時期:離水後の風成砂中に洞爺テフラが位置することから、礫を含む離水前の堆積物は同位体ステージ5eに相当する可能性が高い。野村他(2000)は、浅内沼測線の北方約2kmの逆川地区で、複数の広域テフラを記載した。調査地の洞爺テフラの分布標高は、野村他(2000)が記載した分布標高に比較して約1.5m低い。また逆川地区では標高41〜42mに泥炭層が分布し、その直下から三瓶木次テフラ(SK:降下年代105〜110ka,同位体ステージ5d)を、古期砂丘堆積物最上部の標高43.5mから阿蘇4テフラ(Aso−4:降下年代85〜89ka,同位体ステージ5a/b)をそれぞれ確認、記載している。したがって古期砂丘は同位体ステージ5e〜5aに成長したと判断される。

中期更新世以前の堆積物:B−7孔の深度32m(標高8m)以深、B−9孔の深度26m(標高6m)以深に分布するほぼ固結した基盤岩である。B−7孔では深度38.5m(標高1.5m)までやや固結度が低いシルト質砂岩が分布するが、これ以深では固結度の高いシルト岩ないし粘土岩が分布する。一方B−9孔では固結度の高いシルト岩ないし粘土岩だけが分布する。基盤の4試料について微化石分析を実施したが、有孔虫は検出されなかった。昨年度の反射法地震探査の解釈断面図では、既存の地質調査資料に基づいてB−7孔付近に秋田層序の船川層、B−9孔付近では秋田層序の天徳寺層が分布すると推定した。

B−7孔を基準とする最終間氷期の堆積物の分布標高は以下のとおりである。

・ 古期砂丘堆積物最上部(標高40m付近):5a〜5c相当。

・ 洞爺テフラが分布する層準(標高25.5m付近):5d相当。

・ 古期砂丘堆積物を上載する海浜の砂礫層(標高8〜11.5m): 5e相当。