(5) 米代川における能代断層の活動史

915ADに降下した十和田aテフラに断層変位が認められたことは、能代地震(1694AD)の際に能代断層が活動したとする大沢他(1985)の指摘を裏付けるひとつの状況証拠となりうる。さらに本調査では、この断層変位に先立って、約6,000年前から約4,000年前の期間と、約12,000〜13,000年前と、約10,000年前との間にも能代断層の活動があったと推定した。

3回の断層変位と、これに伴う堆積過程の変遷を、概念的に図3−2−6に示した。その概要を以下に述べる。

a) 12,000〜13,000年前に十和田−八戸テフラ火砕流が米代川を流下、堆積し、その直後に能代地震2 回前の断層変位が発生した。

b) この時生じた隆起側と沈降側の高度差は、約10,000年前までに、沈降側に砂礫を主体とした堆積物が充填することで解消された。

c) 約7,000年前までの海面上昇期には、シルトや細粒砂を主体とする堆積物が堆積した。縄文海進の最高海面期を過ぎると河川環境に移行し、約6,000年前には調査地一帯は離水して能代平野が形成された。能代平野が形成されて間もなく、能代地震1回前の断層変位が発生した。

d) この時の変位に伴って沈降側は水域となり、約4,000年前までに砂層が沈降側を充填した。

e) 沈降側は再び離水し、915ADには十和田aテフラが降下して新期砂丘が成長を始めた。

f) 1694ADに能代地震が発生し、撓曲崖に新期砂丘が成長した。