(4)年代測定データにもとづく断層変位時期の推定

断層変位を生じた時期をより正確に把握するため、ボーリング試料から連続的に年代測定試料を採取し、沖積層の堆積速度を検討した。

試料の分布標高と年代測定値の関係を図3−2−5に示す。図から以下のことが読み取れる。

@ 分布標高−年代値のプロットは、縄文海進の最高海面期までの海面上昇期と、これに続く海面高度の停滞期、およびA1面の離水に伴う堆積速度の大幅な低下を反映し、約6,000〜7,000年前を境として勾配(=堆積速度)が大きく変化する。

A A1面の離水直後に形成された腐植土層が示す8〜9mの高度差は、沈降側に砂層が堆積したことで、約4,000 年前までに3m前後に減少している。このことから砂層が堆積した時期に相当する約6,000年前から約4,000年前までの期間が、断層変位を生じた時期に相当すると推定される。

B 8,000年前から10,000年前前後までの沈降側B−10孔における堆積速度は比較的安定しており、ほぼその延長上の6,000年前にA1面が離水している。隆起側では年代値のばらつきが目立つが、概ね沈降側と同じ堆積速度を示す。一方、この堆積速度を十和田−八戸テフラの堆積時期へ延長すると、隆起側では十和田−八戸テフラの厚さに相当する分の堆積速度が急増するが、沈降側ではテフラの厚さを上回って堆積速度が上昇する。このことから十和田−八戸テフラの堆積時期である約12,000〜13,000年前と、約10,000年前との間の期間が、断層変位を生じた時期と推定される。