(3)八郎潟北岸地区

沈降側の地質状況は、隆起側と関連付けて考察するため、A2面とA3面との延長に2本の東西測線を設定し、ボーリング・ジオスライサー調査を実施した。A2測線には西からB−4・B−51・B−5・B−53・G−5・G−6・B−64・B−63およびB−71の9孔を配置した。A3測線には西からB−1・B−2・B−52・B−3・B−54・G−7・B−56・G−8・B−65・B−66・B−69・B−70およびB−72の13孔を配置した。

隆起側では、3面の沖積段丘面の性格を把握するために南北測線を設定し、ボーリング・ジオスライサー調査を実施した。A1面にはB−41・G−4およびB−57の3孔、A2面にはB−58・B−59およびG−6の3孔を配置した。またA3面にはB−60・B−61・G−8・B−62・B−74・B−63およびB−73の7孔を配置した。

沈降域の簡易柱状図を図2−2−11に、隆起域の簡易柱状図を図2−2−12および図2−2−13に示し、その特徴を以下に述べる。なお詳細な観察記事を巻末の観察記録集に示す。

沈降側A2測線ボーリング試料

B−4孔では深度約8m、B−51孔では深度約5m、B−5孔では深度約4m、B−53孔では深度約2mまで生痕化石、腐植物を含んだシルト質堆積物(沖積層)が分布する。B−4孔とB−51孔では上部約2m程度の区間が砂質の堆積物となっている。沖積層の底部には、白色ないし淡橙色の色調を持った塊状粘土層が、生物撹乱に伴ってパッチ状の粘土片となって散在する。沖積層の下位は砂層、礫層を主体とした堆積物が分布し、深部は褐色に風化した色調を示す。隆起側に近いB−51孔、B−5孔は礫質の部分が多い。

沈降側A3測線ボーリング試料

B−1孔では深度約10m、B−2孔では深度約7m、B−52孔では深度約4m、B−54孔では深度約2mまで生痕化石、腐植物を含んだシルト質堆積物(沖積層)が分布する。B−54孔にはこの堆積物は認められない。B−1孔の深度3.8mからは十和田中掫テフラ(To−Cu:降下年代5.5ka)の軽石が検出された。沖積層直下には特徴的な白色ないし淡橙色の色調を持った塊状粘土層が追跡される。B−3孔ではパッチ状の粘土片となって沖積層の底部に挟在する。塊状粘土層の下位は総じて砂質の層相を示すが、A3測線では頻繁に泥炭層や腐植質砂層を挟在する。砂層は撓曲構造部に近いB−3・B−52孔付近では礫質となるが、隆起側では再び礫率が低下する。また撓曲構造部付近ではしばしば褐色に酸化された色調を呈する。

隆起側A1面のボーリング・ジオスライサー試料

B−55孔、G−4孔下部、B−57孔上部には砂質の堆積物が分布するが、この他はシルト質堆積物ないしシルト優勢互層を主体とする。シルト質堆積物は総じて固結度が高く、生痕や炭質物を伴うことがある。腐植土層は、B−41、B−55、B−57、B−67孔に見られ、B−57孔では耕作土の下部に十和田aテフラの微小な軽石が散在する。

隆起側A2面のボーリング・ジオスライサー試料

B−58孔上部、B−59孔、G−5孔、G−6孔には砂質の堆積物が分布する。B−71孔の下部には礫層が分布する。この他はシルト質堆積物ないしシルト優勢互層を主体とする。シルト質堆積物は総じて固結度が高く、生痕や炭質物を伴うことが多い。砂層には不明瞭な平行葉理が認められ、上方からの植物根の進入が著しい。腐植土層は、G−5、B−64、B−71,B−58、B−59孔に見られるが、一部は耕作土が混入している可能性がある。

隆起側A3面のボーリング・ジオスライサー試料

G−7孔、G−8孔上部、B−56孔、B−62孔、B−63孔、B−66孔下部、B−70孔、B−72孔、B−73孔、およびB−74孔には砂質の堆積物が分布する。この他はシルト質堆積物ないしシルト優勢互層を主体とする。シルト質堆積物は総じて固結度が高く、生痕や炭質物を伴うことがある。腐植土層は、G−7、B−56、B−61、B−63、B−65、B−66、B−69、B−70、B−72、B−73、およびB−74孔に見られるが、全体に薄く、一部は耕作土が混入している可能性がある。

図2−2−11 八郎潟北岸地区・沈降域ボーリング簡易柱状図(1/100)

図2−2−12 八郎潟北岸地区・隆起域東西測線ボーリング・ジオスライサー簡易柱状図(1/100)

図2−2−13 八郎潟北岸地区・隆起域南北測線ボーリング・ジオスライサー簡易柱状図(1/100)