(1)米代川南岸地区

米代川南岸地区では完新世の能代断層の活動履歴を検討するため、ボーリング調査・ジオスライサー調査を実施した。十和田−八戸テフラ(To−H:降下年代12〜13ka「鳥越軽石質火山灰」)に達するボーリングを沈降側から隆起側へB−10、B−11、B−12の3孔配置した。またA1面の離水前後の環境や、十和田aテフラ(To−a:降下年代915AD「毛馬内軽石質火山灰」)の深度を正確に把握するため、G−12、G−13、G−14の3孔のジオスライサーを配置した。

米代川南岸地区の簡易柱状図を図2−2−7および図2−2−8に示し、その特徴を以下に述べる。なお詳細な観察記事は巻末の観察記録集に示す。

ボーリング試料

B−10孔では深度12m付近まで新期砂丘堆積物に相当する塊状無層理の細〜中粒砂が分布する。深度12m付近には十和田aテフラを挟在する腐植土層が分布し、その下位から深度17m付近まで傾斜した葉理を伴う特異な砂層が分布する。砂層の底部には約6000年前の年代を示す腐植土層が認められ、これより下位は沖積1面が離水する以前に堆積した沖積層が分布する。

これに対し、B−11、B−12孔では表層に十和田aテフラを挟在する腐植土層が分布し、その底部が約6,000年前の年代を示す。B−10孔にみられる塊状無層理の細〜中粒砂や傾斜した葉理を伴う特異な砂層は分布しない。沖積1面が離水する以前に堆積した沖積層には、B−10孔の深度62〜66m 付近、B−11孔の深度41〜45m付近、およびB−12孔の深度47〜48m付近に十和田−八戸テフラが火砕流堆積物の様相を呈して分布する。十和田−八戸テフラ付近を境として、沖積層の上部は細粒砂やシルトを主体とする堆積物、下部は砂、礫を主体とした堆積物からなる。B−11孔では、細粒砂やシルトを主体とする堆積物が十和田−八戸テフラの下位に及んで分布しているが、B−10とB−12孔では、逆に砂、礫を主体とした堆積物が十和田−八戸テフラの上位に及んで分布している。

ジオスライサー試料

3孔(G−12、G−13、G−14)には、いずれも十和田aテフラを挟在する腐植土層と、その下位に分布する細粒砂やシルトを主体とする堆積物が分布する。十和田aテフラは、B−12孔およびG−14孔で厚さが数十cm以上に達し、下位の腐植土層も層厚が増大している。十和田aテフラの上位に粗粒砂を上載する。

図2−2−7 米代川南岸ボーリング簡易柱状図(1/500)

図2−2−8 米代川南岸ボーリング・ジオスライサー簡易柱状図(1/100)