4−3−7 金沢断層および杉沢断層の調査結果のまとめ

金沢断層の平均変位速度に関するデータは次のとおりである。

[御所野沼地区]

 T5面(1万年前)の変位量:約2.2m

 平均変位速度=0.2m/千年

[三貫堰地区]

 2.9万年前の粘土層の変位量:約6.8m

 平均変位速度=0.2m/千年

[蛭藻沼地区〈参考値〉]

 T3(3.8万年前)の変位量:約4.8m以上(変位域の一部分での数値)

 平均変位速度=0.13m/千年以上

以上のデータから,平均変位速度は0.2m/千年程度とみられる。

T5段丘面形成以降における断層の地表付近の変位の形態は,広い幅を有する撓曲である。したがって,断層が活動した場合に,地表には段差の伴う地震断層は生じず,地盤が広い範囲で僅かに傾動することになる。

最新活動時期は,T5段丘面が撓曲していることから,約1万年前以降となる。蛭藻沼付近で約4,500年前のT6段丘面が変形している可能性があることから,最新活動時期は4,600年前以降といえる可能性もある。

金沢断層が,陸羽地震(1896)に活動していた可能性も否定できない。

現地での地形観察の結果,杉沢断層に相当する断層崖はみられず,撓曲地形が認められるのみである。金沢層の最近の活動形態が撓曲であることからも,杉沢層の活動形態は撓曲であると判断される。

杉沢断層の活動履歴については独自のデータは得られていない。金沢断層のバックスラストであることから,この活動にともなって変位を生じてきたと考えられる。

蛭藻沼付近で金沢断層を挟んで分布するT2段丘面とT3段丘面の標高差は,約24mである。一方金沢層のバックスラストである杉沢断層を挟んで分布するT2段丘面とT3段丘面の標高差は約7mであることから,杉沢断層の平均変異速度は金沢断層の1/3程度で,0.06m/千年程度であると推定される。

横手市市街における反射法弾性波探査の結果から,横手市市街地には断層が存在しないことが明らかになったため,金沢断層の分布は,六郷町六郷東根から,横手市睦成に至る約9Kmであるとみられる。

金沢断層を睦成までとすると,このバックスラストである杉沢断層も睦成までということになり、分布は約4Km(三貫堰〜睦成)となる。

以上をとりまとめると,金沢断層および杉沢断層のパラメーターは次頁のとおりとなる。

〔金沢断層〕

○断層の分布

 9Km(仙北郡六郷東根付近〜横手市睦成付近)

○平均変位速度

 0.2m/千年(鉛直方向) 

○断層の形態

 走向 北北東−南南西

 東側隆起の逆断層

 約2.9万年前以降は地表では幅の広い撓曲

○最新活動時期,単位変位量,再来間隔 不明

 ただし,1896年8月31日(陸羽地震 M7.2)に活動した可能性がある。

〔杉沢断層〕

○断層の分布

 4Km(横手市三貫堰〜横手市睦成)

○平均変位速度

 0.06m/千年程度

○断層の形態

 走向 北北東−南南西

 金沢断層のバックスラスト,西側隆起の逆断層

 地表付近では撓曲とみられる。

○最新活動時期,単位変位量,再来間隔 不明

 ただし,金沢断層の活動にともなって変位を生じると考えられる。