(2)蛭藻沼地区
蛭藻沼地区の西方,国道13号より西側のリンゴ畑の中で低位段丘面(T3)の低断層崖とみられる箇所でトレンチを掘削した。このT3面は,他のT3面から離れて分布しているため,対比に若干の問題があった。このトレンチで見られた地層の柱状図を,他のT3面の構成層と比較すると図4−10のとおりである。薄い火山灰質の粘土層が表層部に分布すること,構成層の礫がほとんど風化して「くさり礫」になっていることなどから,これをT3面と判断した。このトレンチでは図4−11に示すように上位の円礫が点在するローム質粘土(水中堆積とみられる)と下位のくさり礫混じり粘土(上位より礫含有量が多い)の境界が地表(地山の上面)にほぼ平行に撓曲していることが観察された。なお,断層崖とみえたのは,撓曲崖が水路の建設工事に伴って改変・強調されたものであった。撓曲の幅は約70m,この間の変位量は4.8mと見込まれ,T3面形成(約3.8万年前)以降の平均変位速度は0.13m/千年となる。ただし,断層変位はこの確認された撓曲域以外(例えば国道13号付近に推定される基盤岩の上面を変位させている断層付近)に及んでいる可能性があり,断層全体の平均変位速度は0.13m/千年以上となる。
図4−10 蛭藻沼周辺でのT3及びT5の対比
図4−11 蛭藻沼地区断面図(東西断面)