断層帯は,主に東側隆起の逆断層で,隆起側に形成された山地と沈降側に形成された盆地平野とが,地形的なコントラストを作っている。この断層帯は活断層研究会(1991)によれば,次頁の表4−1に示すように以下の5つに区分される。
・「駒ケ岳西麓断層群」
・「白岩・六郷断層群」
・「金 沢 断 層」
・「杉 沢 断 層」
・「大 森 山 断 層」
このうち「駒ケ岳西麓断層群」および「白岩・六郷断層群」については,1896年に発生した陸羽地震により,生保内地震断層・白岩地震断層・太田地震断層・千屋地震断層が出現した。
この報告書では便宜上,山崎(1896)にならい,これらの地震断層を一括して千屋断層と呼ぶことにする。(表4−1−1)
表4−1 横手盆地東縁断層帯の活断層一覧表
横手盆地東縁断層帯のうち千屋断層については,陸羽地震(1896)の地震断層であることから,これまでボーリング調査・トレンチ調査を含む重要な研究がなされており,活断層のパラメーターの多くが明らかになっている。
一方,金沢断層・杉沢断層・大森山断層については地形地質調査が行われている程度で,断層の分布以外はほとんど把握されていない。
今回の調査(平成9年度・10年度)を開始した時点における,これまでの研究により明らかにされていた活断層のパラメーターについてまとめると,以下のようになる。
○駒ケ岳西麓断層群(生保内地震断層を除く先達川左岸地区)
分 布・・・・・・・・・・・・・・・・・約6km
形 態・・・・・・・・・・・・・・・・・走向:ほぼ南北
傾斜:東傾斜の逆断層
○千屋断層
分 布・・・・・・・・・・・・・・・・・約36km
形 態・・・・・・・・・・・・・・・・・走向:北北東−南南西〜南北
傾斜:東傾斜の逆断層
平均変位速度・・・・・・・・・・・1〜1.4m/千年
最新活動時期・・・・・・・・・・・1896年
最大単位変位量・・・・・・・・・上下変位量:3.5m・水平短縮量:3m以上
横ずれ:0m
再来間隔・・・・・・・・・・・・・・・3,500年
○金沢断層
分 布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・約10km
形 態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・走向:北北東−南南西〜南北
傾斜:東傾斜の逆断層
○杉沢断層
分 布・・・・・・・・・・・・・・・・・・約6.5km
形 態・・・・・・・・・・・・・・・・・・走向:ほぼ南北・西側隆起
(金沢断層の東側に平行して位置し,逆方向に変位していることから,金沢断層のバックスラストと位置づけられる。)
○大森山断層
分 布・・・・・・・・・・・・・・・・・・約24km(確実度Uの範囲)
形 態・・・・・・・・・・・・・・・・・・走向:ほぼ北−南・東側隆起
横手盆地東縁断層帯の活断層としての評価を行うためには,活断層のパラメーターの多くが不明である金沢断層・杉沢断層・大森山断層に重点をおいて調査を進めることが重要であると考えられた。また、これらの断層は陸羽地震の時に地震断層を生じた記録がないことから,千屋断層と比較して関連を検討する必要があった。