今回実施したような深部構造調査には高額な調査費用を必要とするため,東北地方の地殻構造等をモデルケースとし,その他の地域についてはモデルケースの研究成果から外挿する事で対応していくのが現実的である。
東北日本は典型的な島弧−海溝系を形成し,海洋プレートが列島の下に沈みこみ,それによって海溝沿いに巨大地震が発生する他,内陸でも地殻内地震が発生する。こうした地震発生のメカニズムを明らかにすることは,地震災害軽減の上からも重視すべき検討課題である。このため,地震調査推進本部では島弧を横断し,海溝から島弧を横断し日本海にいたる地下深部の構造調査が提案されている(島弧横断プロファイリング計画; 図2−3−3参照)。地下深部の構造探査は,国内では例がなく,また,海外でも大陸地域では多数の実績はあるが,日本列島と同様の火山弧では,実施されたことがない。従って,今回の実験は「島弧横断プロファイリング計画」の試行的なものと考える事ができ,バイブロサイスとダイナマイトを併用した大規模な調査を実施するにあたり,最適な調査仕様を検討するための予備データを取得する事を目的の一つとしていた。その観点からすると,仕様評価のための貴重なデータの取得ができ,更に深部構造調査の解析結果から横手盆地東縁断層の深部構造の大局的な形態を明らかにする事ができた。これにより,陸羽地震の発生メカニズムの解明を検討する貴重な資料が得られたといえ,今後の研究の進捗によってはプレート運動と内陸地震の発生についての因果関係の解明にもつながる可能性がある。