(3)屈折法地震探査
本項では,広角反射データの取得に焦点を絞って記述する。一般に岩盤の弾性波速度は砂や粘土などの未固結地盤の弾性波速度より速く堆積岩であれば,堆積年代が古いほど,また,火成岩であれば地表近傍で固結した火成岩よりも地下深部で固結した深成岩の方が弾性波の伝播速度は速い。即ち,地表から深部にいくに連れて一般に弾性波速度は増大するといえる。この様な構造に対しては,反射波の振幅は境界面への入射角が大きい程大きくなる事が知られている。厳密には比較は難しいけれども,ダイナマイト震源は,バイブロサイス震源と比べて深部透過能力が優れていると言われている。従って,深部構造を対象とする場合には,ダイナマイト発震により品質の良い広角反射データを取得し,適切にイメージングするのが単純には有効な手段と考えられる。今調査では,ダイナマイト発震として薬量50kgが3点,薬量30kgが2点の併せて5点のダイナマイト発震データを収録した。その際,受振器は反射法地震探査と同様,秋田側および岩手側に展開した受振器を用いた。今調査では,岩手側の受振点を含め最大オフセット距離約35qまでのデータ取得が可能なため,良好な広角反射データの収録が充分期待できる仕様になっている。これらのデータの初動部分を屈折法地震探査データとして利用する場合,屈折法の原理に基づくと,展開長または震源と受振器の距離の5分の1以下にあたる最大で深度7q程度までの構造が解析可能である。一方,同時に往復走時で30秒の反射データを収録しており,当該地域の平均的な速度が少なくとも3q/sを超える事を考慮すると,深度45qより深部の情報を取得できている可能性がある。後述する調査結果によれば,有効な反射波は,往復走時で10秒から15秒付近にも確認されている処から,同様の方法で,有効な探査深度は15〜23q以上と見積もる事ができる。尚,屈折法地震探査データの解析については,後述の静補正処理の中で記載するのにとどめ,本報告書の中では,主に広角反射データの処理・解析に焦点を絞り記載してある。