@金沢本町付近においては,廚川沿いの低位段丘2や中位段丘3が丘陵の高い位置にあって,山地縁で途切れ,予想される断層位置を越えて平野側へ連続しない。低位段丘4相当(旧扇頂部)が急傾斜して北北東−南南西方向で直線的に低位段丘6相当面に接している。
A金沢中野付近では,山地西縁沿いに鞍部及び急傾斜面(断層崖地形)がやや不明瞭ながらほぼ直線状に南北方向に追跡されるほか,この前面の低位段丘6相当面の西縁沿いにも,面が緩く平野側に傾斜し,その西端が数mの高低差をもってほぼ直線状に南北方向に断続されること,それを開析する沢に扇状地が形成されていることなどから変位地形が認識される。段丘面内にも国道13号に沿って西落ちの小さな段差が認められる。
Bさらにその南延長の蛭藻沼西付近では,国道13号の東側に沿って分布する中位段丘1,2が背斜状に変形し,その西側の低位段丘5が丸みをもって西に傾斜(撓曲)し,低位段丘6に没すること,この低位段丘5に比高約1.5mの低断層崖が認められることなど,国道13号に沿って南北に延びる明瞭な変位地形が数箇所で認められる。
C御所野から睦成にかけては,低位段丘5及び低位段丘6が国道の西側で相対的に低くなっており,国道の西側に沿って変位地形が認識される。
D睦成より南方延長は横手川の現河道となり不明となる。しかし,さらに延長の横手市中央町から鍛冶町にかけて,最低位段丘6の微高地がほぼ南北方向に連続しおり,本調査ではこの微高地を隆起変位地形と判断している。また,国道13号沿いに北−南に断続的に連続する細長い丘陵では,中位段丘1を切る断層露頭が認められる。
以上のように,金沢断層は,より高位の段丘が西側の山地縁で高い位置で途切れ西側の平野側へ連続しないこと,相対的に高位の面に背斜状の変形や西落ちの撓曲が西側に認められることなどの地形的特徴と,確認したT1面を切る断層の存在等から,ほぼ国道13号に沿って南北に延びる東側隆起・東傾斜の逆断層と判断される。金沢断層は,山地・丘陵と平野の境界に位置し,変位地形の特徴も千屋断層と類似し,位置的にも山地・丘陵と平野の境界にあることなどから,構造的にも千屋断層と同様なものと考えられる。