年代測定結果の一覧表を表1−3−4−1に,段丘面区分毎の年代値を表1−3−4−2に示す。
表1−3−4−1 年代測定結果一覧表
表1−3−4−2 段丘面区分と推定年代
地形面の古い順に,年代について述べる。
(1)低位段丘3(T3)
低位段丘3面(T3)における試料採取箇所は,新規農免道路の切取り法面である。この上位約2mは,シルト・粘土層が分布し,その下位は砂礫層を主体としている。このうち,試料の採取は砂礫層の下部に挟在される腐植質粘土層を対象とし,AMS法(加速器質量分析法)による年代は38,710±550y.B.Pの値が得られた。
ボーリング調査では,各面の下位にスケールオーバーないし約34,000y.B.P以前の年代(β線計数法)の地層が存在し,これらは,年代及び層相からみて低位段丘3(T3)に相当すると考えられる。
一般に,β線計数法によって得られた2〜3万年以前の値については,精度が低いと言われていることから,AMS法による年代を採用し,低位段丘堆積物の堆積時期を約38,000〜約50,000年前とし,低位段丘3面の形成時期を約38,000年前と考える。
(2)低位段丘4(T4)
低位段丘4(T4)面における試料の採取は行っていないが,吉沢扇状地端部域に位置する最低位段丘8’(T8)面からのボーリング(BSU−1孔)によって下位層の低位段丘4(T4)と考えられる地層を採取した。試料の採取は,葉理が明瞭な粘土〜シルトを対象とし,年代測定の結果は,28,630±360y.B.P(β線計数法法)での値が得られた。
一方,杉沢断層の東側に相当する旧蛭藻沼で実施したボーリング(BBI−1孔)では,低位段丘5(T5)の直下に分布する葉理を伴う粘土〜砂を主体とする地層と類似した地質が分布し,その年代測定値は,26,750±1040y.B.P及び25,460±600y.B.P(いずれもβ線計数法)の値が得られた。
また,当初低位段丘5(T5)と考えた安本地区における試料(OYA−1・2)は,25,200±100y.B.P(AMS法)及び24,540±250y.B.P(β線計数法)の年代が得られ,低位段丘4(T4)と判断した。
さらに,茨嶋地区で実施したボーリング(BBA−1孔)では,新規扇状地堆積物の直下に分布する礫混じりシルト・粘土層の年代は31,480±370y.B.Pを示している。
いずれの試料とも年代が近似しており,これらの年代を全て採用し低位段丘堆積物4(T4)の堆積時期を,約24,000〜約31,000年前とし,低位段丘4(T4)面の形成時期を約24,000年前と考える。
(3)低位段丘5(T5)
低位段丘5(T5)面における試料採取は,直接ピット調査及びボーリング調査により得た。
その結果(AMS法),以下の測定値が得られた。
・ピット(PD) :16,410±60y.B.P
・ピット(PE) :10,180±50y.B.P
・ボーリング(BBI−1): 9,960±50y.B.P(深度3.50〜3.60m)
・ピット(PA) : 6,140±50y.B.P
・ピット(PF) : 4,300±50y.B.P
・ボーリング(BBI−1): 5,980±80y.B.P(深度1.50〜1.60m)
ピットPA等で得られた年代値は,最低段丘6(T6)で採取した試料の年代にほぼ一致している。
一般に地表付近で採取した試料は,地表部からの植生(地下茎)の進入等による影響を受けることがあり,ピットPA等で得られた年代値はそれによる若返りと判断される。
また,最低位段丘6(T6)面で実施したBBI−1孔においては,深度1.65〜1.75mが10,770±60y.B.P・18,800±160y.B.Pの値が得られ,これらも低位段丘5(T5)と判断できる。
これらの年代測定値より,低位段丘堆積物5(T5)の堆積時期は約10,000〜約19,000年前とし,低位段丘5面の形成時期を約10,000年前と考える。
(4)最低位段丘6(T6)
最低位段丘6(T6)面における試料の採取は,三貫堰川沿いの露頭(OSA−1・OSA−2)及びボーリングコア(BBI−2孔)から採取した。
この結果,露頭OSA−1孔において,6,780±50y.B.P・露頭OSA−2において「現在」,ボーリングBBI−2の深度0.50〜0.60mで,4740±70y.B.P,深度1.20〜1.30mで5,770±50y.B.Pの値が得られた。露頭OSA−2の測定値については,圃場整備に伴う影響(新しい地層の混入)を受けたと判断される。
一方,最低位段丘7面から実施したBSA−2の深度0.88〜0.95mでは,7,040±70y.B.Pとほぼ同様な年代測定値が得られ,これらを含めて最低位段丘6(T6)の年代を決定した。
最低位段丘6の堆積時期を約4,500〜約7,000年前とし,最低位段丘6面の形成期を約4,500年前と考える。
(5)最低位段丘7(T7)
最低位段丘7(T7)面における試料の採取は,三貫堰川地区で実施したボーリングBSA−1及びボーリングBSA−2によって得られたコアから採取した。その結果,BSA−1の深度0.28〜0.38mで1,120±40y.B.P・深度0.86〜0.96mで2,190±50y.B.P・深度1.00〜1.10mで2,270±60y.B.P・BSA−2の深度0.60〜0.70mで1,000±60y.B.Pの値が得られた。
BSA−1の深度0.28〜0.38mおよび,BSA−2の深度0.60〜0.70mは,耕作土直下に位置する有機質粘土であることから若返っている可能性が高い。 したがって,これら二つの年代結果を除いて,最低位段丘7(T7)の年代について決定した。
最低位段丘堆積物7(T7)の堆積時期を約2,100〜2,300年前とし,最低位段丘7(T7)面の形成期を約2,100年前と考える。
(6)最低位段丘8’(T8)
最低位段丘8’における試料の採取は,ボーリングBBI−3孔及びBSU−1孔によって得られたコアから採取した。
その結果,BBI−3孔の深度0.44〜0.54mで780±60y.B.P,BSU−1の深度0.85〜0.95mで670±50y.B.Pの値が得られた。
これから,最低位段丘8'(T8)面は約700年前に形成されたと考える。