図1−3−3−8 蛭藻沼地区調査位置図
蛭藻沼地区では,蛭藻沼と国道13号に挟まれた中位段丘1(T)・中位段丘2(T2)が背斜状に変形しており,それらに接する低位段丘5(T5)及び最低位段丘6(T6)の境界には明瞭な地形変換線が認められる。
国道13号沿いに分布する低位段丘5(T5)には,比高約1.5mの低断層崖が認められる。その南方延長部には最低位位段丘6(T)が主に分布し,現状の地形においては変位地形として認識困難であるものの,空中写真判読によると,わずかな高まりが東側に認めらる。この低断層崖は,最低位段丘6(T6)まで延長している可能性がある。
ピット調査は,低断層崖が明瞭に確認できる低位段丘堆積物5(T5)面上にて,低断層崖を挟んで実施した(下盤側でPE・PFの2箇所・上盤側でPI・PFの2箇所,計4箇所実施)。
各ピット状況をスケッチ及び写真として図1−3−3−9〜図1−3−3−16に示した。また,これらを結んだ地質断面図を図1−3−3−17に示した。
図1−3−3−9・図1−3−3−10・図1−3−3−11・図1−3−3−12・図1−3−3−13・図1−3−3−14・図1−3−3−15・図1−3−3−16
ピット調査結果図(PA・PB・PD・PG)
図1−3−3−17 蛭藻沼地区(東)東西断面 地質断面図
これらの結果,低位段丘5(T5)の最上部(0.2〜0.4m以浅)には黒ボクが分布する。その下位にはPFで認められるシルト質砂礫層を主体とする地層及びPI・PH・PFで認められる黄褐色を呈する均質なシルト層(凝灰礫を一部含み,径1〜3mmの炭化物が挟在)が分布する。
PI・PH・PEの最下位には,割れ目を伴う固結度が良好なシルト層が分布している。図1−3−3−17に示すように,下盤側の構造は約3゚の西傾斜を呈し,上盤側ではPFがPIの上位層になると考えられることから約1゚の西傾斜と考えられる。
また,低位段丘堆積物5(T5)の黄褐色を呈する均質なシルト層の下面において,上下変位量を推定すると約1.0mとなる。なお,これは地形面から計測した1.5mの2/3の量となることから,下盤が撓んだことにより断層部の変位量が見掛け上小さくなったものと判断される。
BBI−2孔は,北側のピット調査を実施した低位段丘堆積物5の低断層崖の南側延長部から西側へ約110mの地点(最低位段丘6(T6))で実施した。これらのボーリング調査結果は,図1−3−3−18の柱状図及び図1−3−3−19のコア写真に示した。また,地形地質調査結果と合わせて,図1−3−3−20及び図1−3−3−21の地質断面図に示した。
図1−3−3−18・図1−3−3−19 ボ−リングコア写真・柱状図
図1−3−3−20・図1−3−3−21 蛭藻沼地区(中央)東西断面 地質断面図
これらによると,BBI−2孔には,深度1.35mまでは最低位段丘堆積物6(T6),深度1.35〜2.53mは低位段丘堆積物5(T5),それ以深は低位段丘堆積物3(T3)が分布する。2.53m以浅の地質細区分を以下に示す。
深度0.0〜0.45m:耕作土
深度0.45〜1.35m:粘土・シルト層( 5,770±50y.B.P)
深度1.35〜1.85m:粘度・シルト層(10,770±60y.B.P)
深度1.85〜2.53m:粘土・シルト層(18,800±160y.B.P)
次に,深度2.53m以深の低位段丘堆積物3(T3)は,粘土混り砂礫層を主体とするが,礫→砂→シルト・粘土と巨視的に上方細粒化(級化)のサイクルが5回認められる。部分的には,粘土混り砂礫層の上位に直接粘土が堆積している箇所が認められる。
細粒分に富む部分では,葉理の発達が認められる。深度20.83〜21.53m間は,有機質シルト粘土及び泥炭からなり,深度21.12〜21.28mには粘土シルトを挟在する。この層相及び対は,BSA−1孔の深度12.77〜13.83m区間に類似することから鍵層として対比可能と考える。