(1)三貫堰地区

三貫堰地区においては,川に沿った形状で下流側にT7面・上流側にT6面が分布し,金沢断層上のT7面には変位地形が認められない。

三貫堰川の北側に分布するT2面には西への傾動が認められ,その前面に比高約0.5〜1.0mの低断層崖と思われる段差地形が認められる。

三貫堰川の南域においては,蛭藻沼の西側に変動凸地形が認められ,T2面とT5面の境界部に明瞭な傾斜変換線が認められる。

これら北側・南域に認められる変位地形を直線的に結んだ位置を金沢断層の分布位置と想定し,断層想定位置を挟んでT7面上に,2孔のボーリング調査を実施した。

図1−3−3−1 三貫堰地区調査位置図

これらのボーリングの調査結果は,ボーリング柱状図(1/100)及びコア写真に示した。また,地形地質調査結果を合わせて,地質断面図に示した。

図1−3−3−2図1−3−3−3 ・図1−3−3−4図1−3−3−5 ボ−リングコア写真・柱状図 (BSA−1) 

図1−3−3−6図1−3−3−7   三貫堰地区地質断面図

これらによると,下盤側で実施したBSA−1孔は,深度2.34mまでは最低位丘堆積物7(T7),それ以深は低位段丘堆積物3(T3)が分布していると判断される。ただし,深度0.96〜1.24mの有機物混り粘土(2,270±60y.B.P)の直下(深度1.24〜1.43m)には礫層が分布していることから,この礫層の下位から2.34mの区間は,最低位段丘堆積物7(T7)より古い堆積物が分布している可能性がある。仮に古い堆積物が分布している場合,後述するBSA−2孔の結果から,最低位段丘堆積物6(T6)の可能性が考えられる。

また,中位段丘堆積物3(T3)は,粘土混り礫層を主体とするが,礫→砂→シルト・粘土と巨視的には上方細粒化(級化)のサイクルが何回も認められる。また,細粒分に富む部分においては,不明瞭ながら葉理が認められる。

深度12.77〜13.83m区間の地質において,深度12.95〜13.16m区間に粘土シルトを挟在する泥炭及び有機質な粘土層が分布している。

上盤側で実施したBSA−2孔においては,以下の地質が分布している。

・深度0.72m以浅 :最低位段丘堆積物7(T7)

・深度0.72〜3.12m:最低位段丘堆積物6(T6)

・深度3.12〜5.24m:低位段丘堆積物3(T3)

・深度5.24m以深 :相野々層(第三紀層)

上記区分における0.72〜3.12m区間は,最低位段丘物6(T6)が全てを占めていない可能性がある。

深度3.12〜3.57mには粘土層を挟在し,この粘土層は層厚・層相及び有機質の含有量等から,BSA−1孔の深度12.95〜13.16mと対比(鍵層)できると考えられる。

以上のことから,当地区での金沢断層の位置は,当初想定したように2孔のボーリング孔の間に存在すると考えられる。また,両孔の低位段丘堆積物3(T3)中に認められた粘土層を挟在する有機質に富む粘土層が対比できれば,その鍵層が堆積した後の断層変位に伴う上下変位量は約11mとなる。

金沢断層分布の位置・・・・・・BSA−1孔とBSA−2孔の間

最新活動時期・・・・・・・・・・・・最低位段丘7の堆積以前

変位基準面・・・・・・・・・・・・・・低位段丘堆積物3中の有機質に富む粘土層(粘土を挟在)・上下変位量約11m