この断層は、西三河平野(猿投−碧海盆地)と尾張東部丘陵や猿投山地(猿投−知多上昇帯)を分ける断層として地形・地質学的記載がなされてきた。南西端の大府市中央町から境川低地の北西縁に沿って北東−南西方向に走り、豊田市の猿投神社付近から南−北方向に向きを変え、北端の藤岡町石畳地区付近まで続く断層である。
従来、高根山撓曲と猿投−境川断層は豊明市付近で別々に記載されており、同じ断層として扱っていなかったが、図4−1に見られるように、豊明市付近でも矢田川累層の急傾斜帯や中位段丘面の変位が断続的であるが認められ、双方ともこの付近では矢田川累層の撓曲帯を伴うことや中位段丘面の変位を伴うこと等、幾つかの共通性があり、2つの断層を分割する根拠はないことから、この2つの断層をまとめ、猿投−境川断層とし延長34kmとする。
なお、この断層の地形・地質的な特徴は、次の通りである。
北東部:三好町・豊田市・藤岡町では、花崗岩と矢田川累層、あるいは矢田川累層と更新世中期の三好層(最高位段丘層)とが逆断層で接し、地質境界断層の形態を示している。この断層を横断する河谷には低位段丘面が形成されているが、顕著な変位地形は認められない。
南西部:丘陵の東南縁に沿って新第三紀東海層群矢田川累層の撓曲帯で、これに沿う中位段丘面・高位段丘面群も撓曲状に変形を受けて南東にゆるく傾斜し、その基部に活断層が推定される。
図4−1 猿投−境川断層の活断層詳細図(1:50,000)