以下には、主にマイグレーション処理後の深度断面を基に、浅層反射法地震探査測線の解析断面に認められる記録の状態及び反射面の分布形状について記述する。
@記録の状態
図3−36の深度断面図では、測線両端部の30m程の範囲で反射面の記録が不明瞭となっている。これは用地の制約により測線両端部から外側での起振が行えなかったためである。
また、深度方向に向かっては、深度40m付近より深部では反射面のコントラストが低く、明確な記録は得られていない。これは測線が耕地上に設定され、起振機接地面が軟質であったことを示しており、ポータブルバイブレーターではこの深度までエネルギーが伝播できなかったことによると考えられる。
なお、測定時には測線終点側から数10m離れた位置で重機による造成工事が行われていたが、記録の状況からはこのノイズによる影響はほとんどないと判断される。
A反射面の分布形状
深度断面図では、浅層には明瞭な反射面がない層が10m前後の層厚で分布し、終点側(東側)に向かって傾斜し、層厚も漸次厚くなっている。測線設置位置の地形地質条件からは、この部分は基盤被覆層を示すものと考えられる。ただし、この層の基底を示す反射面は、距離程130m付近から終点側では比較的明瞭であるが、これより始点側はかなり不明瞭な状態となっている。このことから、深度10m前後にある反射面は見掛け上は同一面であるが、実際には弾性的性質が大きく異なるものである可能性が高い。
深度10m前後以深では、深度断面の始点側と終点側では反射面の連続性は大きく異なる。距離程130m前後付近から始点側では、反射面は比較的明瞭であるが、連続性のある面はほとんど認められない。一方、これより終点側では、距離程150m付近を境として、反射面は不明瞭ではあるが東側に急傾斜する構造が読み取れる。この両者の境界面は西に急傾斜しており、この境界が断層面を示している可能性が高いと判断される。
B地質学的解釈
図3−37は極浅層反射法地震探査の地質学的解釈断面図である。この地域は、断面の東側(終点側)では花崗岩を不整合に覆って東海層群矢田川累層が厚く分布しており、測点120〜200mの深度50m程度の深さまでの連続性の良い反射面は地層の境界を表していると推定される。地層の傾斜は、断層近傍では東傾斜、これより東側では西傾斜の反射面が現れており、断層付近の東傾斜は、断層による撓曲を表していると推定される。一方、断層より西側(測点0〜120m)では、不均等な反射面が断続的に現れており、風化状況に応じた反射面と思われる。西側では東海層群矢田川累層は分布せず、未固結層下には風化した花崗岩が分布するものと推定される。
断層と考えられる反射面の不連続は3本見られ、断層がどの位置かはこの反射断面だけでは特定できないが、断層近傍で矢田川累層が急傾斜する事を考慮すると、真ん中のラインが断層の可能性が高い。
図3−33 極浅層反射法地震探査時間断面図(マイグレーション処理前)
図3−34 極浅層反射法地震探査時間断面図(マイグレーション処理後)
図3−35 極浅層反射法地震探査深度断面図(マイグレーション処理前)
図3−36 極浅層反射法地震探査深度断面図(マイグレーション処理後)
図3−37 極浅層反射法地震探査解釈断面図